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かくいう私は、どちらかというと憂鬱な気分でいた。実技は苦手分野だ。危険を楽しもうという勇気もなく、そもそも無事に試験を終えられるのかが心配という体たらくだ。
「えらい嫌そうな顔やなぁ」
いつの間にかガオナァさんが隣に立っていた。
『はい、実技はちょっと苦手でして⋯⋯』
「ほんまぁ?僕もですよ、初授業1発目からこれとかキッツイわぁ」
ガオナァさんは大袈裟に肩を落とし、盛大に溜息を吐く。コミカルな動きが面白く、思わず笑いを溢してしまう。
「ちょっと何笑ろてるん!」
『ご、ごめんなさい。直球な感想だなって、つい⋯⋯でもガオナァさんの気持ち、すごく分かります』
「せやろ? 溜息吐きたくもなるわこんなん⋯⋯あ、チーノでいいですよ。そっちのお名前は?」
『A・Aです、よろしくお願いします⋯⋯えっと、チーノくん?』
「そうそう。Aさんですね、ばっちし覚えたわ」
満足げに頷くチーノくんに安堵していると、自分の緊張が解れていることに気がつく。さっきは違和感を覚えた笑顔も、今はありがたく感じられた。自分だけが不安を覚えているのではないと思うと、少しだけ励まされる。
「では、翼を広げて」
そうこうしているうちに、先生から合図がかかる。特にやる気のある生徒は、いち早くスタートしようと、崖の先端に集まっていた。言われた通りに翼を広げ、ごくりと喉を鳴らす。
「それじゃ、お互い頑張りましょか」
『うん、気をつけて』
スタート、という掛け声と共に、先生が上げた手を、勢いよく下ろす。生徒達が一斉に跳び上がり、舞い上がった風で身体が飛ばされそうになるのをどうにかして耐え、負けじと私も地面を蹴った。
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いらお(プロフ) - お皿さん» ありがとうございます、はてなマークに笑っちゃいました(笑)応援とても嬉しいです、頑張ります! (2023年3月2日 7時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - りうっこさん» 返信遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、ストライク取れて光栄です!ゆっくりにはなるかと思いますが、更新した際にはぜひチェックしてやってください…! (2023年3月2日 7時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
お皿(プロフ) - 陰から応援してる者です...もう、本当に大好きです...ありがとうございます(泣)(?)これからも陰ながら応援させていただきます。頑張ってください!! (2023年3月1日 22時) (レス) @page27 id: 5bd738696b (このIDを非表示/違反報告)
りうっこ - ぶっ刺さりました。ドストライクです… 割と久しぶりの感覚かもです!更新めちゃくちゃ楽しみにしてるので、頑張ってください!! (2023年2月3日 9時) (レス) @page26 id: 182708b139 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - 明日花さん» コメントありがとうございます、すごい嬉しいです!拙い作品ではありますが、明日花さんの性癖に刺さったのでしたら光栄に思います。ゆったり更新してまいりますので、気が向いた時にでもまた本作品を読んでいただければ幸いです! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いらお | 作成日時:2022年12月28日 16時