夢35回目 side Kaito ページ35
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side Kaito
今日からまた1週間が始まる。
少し憂鬱な気分をどうにかしようと、炭酸飲料を買いに行った帰り、8組がいつもより騒がしいことに気づく。
同じ中学だったやつに声をかけると、そいつは少し興奮気味に、菅井さんって子が髪切った!と教えてくれた。
へ〜菅井さんね〜、可愛いのかな、部活で麻里ちゃんに聞こう、とスルーしようとしたところで耳に入った麻里ちゃんの
「A、どうしたの!!!!」
という声。
…え?Aちゃん?
そっか、いつもAちゃんて呼んでたから意識してなかったけど、菅井っていうのか。
そう思いながらチラリとクラスの中を覗くと、みんなに囲まれてアタフタしているAちゃんがいた。
…………嘘でしょ。
あんなにバッサリ…
腰まであった髪は肩と肩甲骨の間あたりで揃えられ、今まで見受けられなかった横に流した前髪が、彼女を幼くさせていた。
いや、今までが大人らしすぎたのだ。
細すぎない筋肉のついた綺麗な脚に長い首、白い肌にどこか憂いを帯びた瞳。
黒い髪を揺らしながら歩く彼女は、男子からも女子からも一目置かれていた。
1年の時は、みんなが あの子綺麗だよね〜と言い、その反面で、大人っぽくて近寄りがたい観賞用とも評されていた。
きっと失恋相手の好みが大人な女性か、それか相手自体が大人か、そんなところだろうと思っていたけど、こんなイメチェンしてくるということはその人と何かあったのだろうか。
2年になって初めて話した彼女は、近寄りがたさなんて微塵も感じさせないノリとテンションで、ただただ失恋をしている普通の女の子だった。
詳しいことは何も教えてくれなかったけれど、今日も失恋したと麻里ちゃんと話す彼女は、高嶺の花なんて言葉は似合わない、明るくて可愛い普通の女子高生だ。
と、思っていたけど……
これはやばい。
普通ではなくなってしまった。
髪を切って可愛くなったと思ったけど、そんなもんじゃないな、これは…
先週と顔つきが全然違う。
「これは失恋終了かな〜?」
おそらく彼女はこれからモテるだろう。
高嶺の花だった女の子が、憂いを捨てて美少女になった。
これは早くみんなに話さないと!
「ちょ!ジン、廉!集合!!」
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作者名:ぱぴこ | 作成日時:2019年5月30日 22時