検索窓
今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:230,915 hit

真夜中19回目 ページ19

.





『永瀬くんはさ、失恋したことある?』


「ない」


『気持ちいいくらいに即答だね』


「というより、そこまで人を好きになったことがない」


『ああ、そっち』


「お前の失恋の相手ってどんなやつ?」


『先生はね…

ガタイが良い割に可愛くて

やることしっかり出来るのに天然で

大人なのにフワフワしてて

いつもニコニコ笑ってて

時々良い香りの香水つけてて

大きな手で撫でてくれて

私が集中してなかったら叱ってくれて

勉強大変でも投げ出さないで

CMソング大熱唱して

それから………「わかった!わかった…」



「……もういい」



『うん』



「先生なん?」



『うん。
中2のときに家庭教師してくれた先生。
私の初恋。』



「少女漫画かよ」



『それで、今は私のお姉ちゃんの婚約者』



「…………は?」



『今年の春からうちで同棲してるの。
だから毎日失恋。』



「……………」



『忘れようにも忘れられなくてさ』



「…………せやな」



『さっき寝ようとしてたら隣から声聞こえて』



「おん」



『たぶんヤってた』



「…………おん」



『同棲してるんだし子供じゃないんだし、当たり前なんだけどさ、、初めて聞こえたの。』

『ちょっと、無理でさ。気づいたら自転車ぶっ飛ばしてた。』



「そういうことか」



『ありがとう。話したら少し落ち着いてきた』



「辛かったな。お疲れさん」



『家帰らなくて大丈夫?』



「友達ん家に泊まるって言ってきた」



『え?今日帰らないの?』



「お前帰らんやろ?付き合うたるわ」



『ああ、そっか…そう、だな。
今日は帰りたくない、かな』



「明日休みやしな。オールやオール」



『永瀬くん明日部活は?』



「この前足捻ってん。治るまで休み」



『え、大丈夫?』



「こんくらいすぐ治る」



『そっか。』









そしてまた私たちは黙った。
夏の虫たちの声と、遠くに聞こえる車とバイクの排気音。
いつもとは全く異なる世界に、夢を見ている気分になった。

.

真夜中20回目→←真夜中18回目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (198 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
535人がお気に入り
設定タグ:永瀬廉
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぱぴこ | 作成日時:2019年5月30日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。