【赤羽業】毒舌cool少女は中々心を開かない。Knock twice

47個目の扉 ページ4

浅野side

今朝､Aが放った言葉

それが只管頭の内を廻り、
僕の思考を占領する

“ストックホルム症候群”

誘拐事件や拘禁事件等の被害者が加害者と長い時間を共にする事で、加害者に過度の連帯感や好意的な感情を抱く現象…

不意に、浮かんできた思想

それは余りにも､彼女…､Aが発した想いに酷似していて


「はッ…」


息が､漏れる

僕は一体、彼女の何を視ていたのか



───傲っていた

彼女……､Aは、僕だけには本心を出してくれていると



───侮っていた

Aの心情を



───知らなかった

Aがずっと、長い年月、そう思っていた何て

あんな、あんな近くにいたのに

肩を並べられる程、近く、いたのに

“一番一緒にいたから”

Aが発した想いは
一理あって



“同情”と、“愛情”



そうかも、しれない

一番一緒にいたから
彼女に惹かれたのかもしれない



彼女の壮絶な過去を
知っているから､

同情して、それを愛情だと
受け違っていたのかもしれない



───だとしたら、僕は、一体、どれだけ彼女を傷付けていたんだろう

Aは、同情されるのが何よりも嫌いで

Aは、他者の感情に人一倍敏感で



＿＿＿Aは…誰よりも性根が優しいから


喩え心底嫌いな奴だとしても困っていたら無条件で手を貸すし、そうじゃなくても見て見ぬふりはしない───否、 出来ない の方が正しいだろう

そう、憶測を立ててれば、ふと、気付く事もあって

そんな優しいAだからこそ、今でも僕は、振られずにいるんじゃないんだろうか
今迄…幼馴染(コノ関係)を、保持出来ていたのではないだろうか

───……どうしようもない程、優しいAだからこそ、キス、しても怒らなかった…、否、“怒れなかった”のでは、ないのだろうか…?




本当は嫌で仕方なかったとしても、振り払えず、拒絶出来なかった

緊張で力んでると思っていた唇も、嫌悪で一杯で、力まずにはいられなかった

僕の隣にいてくれたのも、準備の良い彼女だから先々の事を見通して嫌々隣にいるしかなかった

Aがキスを拒絶しなかった理由も
僕の隣にいてくれた理由も…、

これなら、殆ど辻褄が合う



思考は悪い方向ばかり進むのが速く
"これが真相何じゃないか"と思わされる



彼女に限らず僕は幼少期から
“強い” と言われて来たが……、違う



僕が強くあれるのは
彼女が隣にいてくれたからで

Aが傍にいないと
僕はこんなにも




＿＿弱く、脆い

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