57個目の扉* ページ14
徳川side
『っ………っ………!!』
「ん…………、声、我慢するな」
ギシギシと備品のソファーが激しく音を立てて
如何わしい水音が室内を充満する
眼前には、何日も食物を口にしてない
飢えた獣の如く喰らい付いて来る彼がいて
少し休もう、と言っても
聞く耳を持たないだろう
それでも疲れたら言わずにいられないのが
人間の性と言うもので
『っ……、学、秀……、ちょっと……休もう…?』
「駄目だ。Aに好意を持って以来僕がどれだけ我慢してたと思っている」
『そ………れは悪かったと思ってるけど……。でも、少し疲れたから……』
「やだ」
むっ、とお菓子を買ってもらえなかった子供の如く拗ねる学秀
それを目に胸がキュゥッって締まる私はきっと重症で
機嫌を戻す為にサラサラな髪を撫でてれば、学秀が「そういえば…」と何か思い出した様に口開く
「今朝、Aはこんな事を言っていたな。“僕がAを好きなのは一番一緒にいたからじゃないか”、“もし他の子が僕の幼馴染だとしたらその子を好きになっていたのではないか”、と」
今朝、私が放った言葉
それを端的に繰り返す学秀に、一回、顎を引く
だってそれは、学秀に好意を伝えられる前……、私が"学秀の幼馴染"となってからずっと思っていた事で
そしてその思いは、交際を始めた今でも変わってはなく
姿勢を正して学秀と向き合う
「結論から言おう」
学秀が息を吸うのと反対
息を呑む
「そんな事は有り得ない」
ハッキリと、迷いなく
真っ直ぐ此方を見据えてそう断言する学秀にドクリと心臓が鳴る
「確かにAの言う通り他の子が僕の幼馴染で、誰よりも僕の近くに居たら僕はその子に好意を持っていたかもしれない」
『っ……だったら──』
「だが、そんな事実は存在しない。“もし他の子が僕の近くにいたら”、“もしAが僕の幼馴染じゃなかったら”、……、これは只の仮定法でしかなく、僕がAを、紛れもない徳川 Aを、好きになったのが事実、どうしようもない現実なのだから」
真っ直ぐ、迷いなく、曇り無く
そうハッキリと断言する学秀を目に、ツンッと鼻奥に刺激が加わり目頭に熱が集まる
溢れんばかりに目頭に溜ったモノ
それを学秀は親指の腹で拭い落とし、「何点だ?」何て意地悪く笑うもので
『……96点』
ギュッと、彼の首に腕を回す
それから静かに額と額をくっ付けたら
『……私の方が、ずっとずっと先に学秀の事好きになったんだもん』
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サヤ(プロフ) - 桜南さん» アセアセ。ありがとう御座います(1年経ちそうな返信ですみません)またのんびりのんびり更新する予定ですのでお目通し頂けましたら幸いです!! (2022年5月11日 4時) (レス) @page6 id: 54deb64473 (このIDを非表示/違反報告)
桜南 - この作品すごく好きです!続き楽しみにしてます! (2021年6月26日 13時) (レス) id: 25a9b19637 (このIDを非表示/違反報告)
サヤ - 浅野月愛さん» そうだったんですね!あ、はは……あおちゃん…、葵さんに個人的な質問をするチャンスだと思ったらつい…お恥ずかしい限りです…。それと、この作品は預かってるとは言え一応菜花さんのですから出来るだけ質問は本作の方で御願い申し上げます(><) (2019年1月27日 15時) (レス) id: fb5777db69 (このIDを非表示/違反報告)
浅野月愛 - サヤさん» サヤさん宛てです!カップルの会話で、アヤさんとサヤさんのコメントが沢山あって気になってたんです! (2019年1月27日 9時) (レス) id: e6ca85b3e9 (このIDを非表示/違反報告)
菜花 - 浅野月愛さん» 此処には葵さんがいすぎてどの方の事か見当付かないのですが、もし、合作させて頂いてる葵さんの事でしたら違います。此方こそ申し訳ありません。理由を御訊きしても良いでしょうか…? (2019年1月27日 6時) (レス) id: b56c1459fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜花 | 作成日時:2018年5月1日 0時