Feather (ページ10)

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かくれんぼページ10

「今日バイトは？」
「ない。けど…私田中くんにバイトの話した？」
「してないよ。駅前の喫茶店で店の外にメニューの看板出してたAちゃんは見かけたけど」

…見られてたんだ。それは知らなかった。

私のバイト先は駅前にある小さな喫茶店。
そこのオーナーさんと私のお母さんが知り合いで、人手不足だからって話を聞いてアルバイトを申し出たのは二ヶ月前のこと。

長年やっていることもありお店に来るのはだいたいオーナーと年齢が同じくらいの常連さんばかりだから、まさか田中くんに見つかるとは思ってもみなかった。

「田中くん、私のこと見つけるの早くない？」
「俺かくれんぼ最強だったからかな」
「…結構本気のトーンで言うんだね」
「いやマジで最強だったんだって。俺が鬼だとすぐ見つかるしつまんないって言われてたんだから」

本当だよ？と私を見ながら話す田中くんに苦笑いをしているうちに着いたいつもの空き地。

土管を覗いたらやっぱりミケちゃんがいて、先に土管を覗いた田中くんの胸にぴょんとミケちゃんが飛びつく。

「あっぶね…お前勢いよく飛びついてくんなよ、もし俺が受け止めんの失敗したら怪我すんだろ」
「ニャーン」
「にゃーん、じゃねぇ。甘えて許されようとすんな」

まるで田中くんの言葉が分かるみたいにタイミングよく鳴き声を上げるミケちゃんと、なんだかんだ言って優しくミケちゃんを抱き抱えながら撫でる田中くんを見るのはやっぱり好きで。

いつかこの光景を写真に収められたらな。って思うのに、勇気がない私にはそれが出来ない。
代わりに目の前の光景を忘れないように脳裏に焼き付けて、私だけの記憶に保存フォルダーとして残してる。