Feather (ページ43)

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そしてページ43

真っ直ぐに、それでいて優しい目が私を見る。

「それ以上可愛くなんの禁止ね」
「え？」
「Aちゃんの可愛さに気付いてんの俺だけでいいの」
「…全然可愛くないのに」
「可愛いよ」

田中くんに見つめられて、またどうしたらいいか分からなくなる。
恥ずかしさで顔が熱くてたまらない。困った、と目を逸らしたら、まるで自分を無視しないでとばかりにミケちゃんが鳴き声を上げる。

「…忘れてた。今やるからちょっと待ってな」
「そ、そうだ！私も今日は持ってきたからあげるね！」

田中くんは猫缶を、私はちゃおチュールを取り出してミケちゃんに視線を合わせるみたいにしゃがみ込む。

「なんかデカくなった？」
「もう大人だね」
「そりゃそうか、あれから一年経ったもんなぁ」
「あんなに小さかったのにね」

出会った時は本当に小さな子猫だった。
あの雨の日に田中くんが抱き抱えながらここにいたのも随分と昔な気がする。

お腹がいっぱいになって満足したのか、ぐっと伸びをしたミケちゃんはピンと尻尾を立てながらふらりといなくなってしまう。
今日も自由だなあと思っていたら、先に立ち上がった田中くんが私の前に手を差し伸べる。

「俺らも行こう」
「…うん」

その手を掴んでいいのか一瞬躊躇う。けれど、掴みたいと思った。自信を持ちたかったんだ。田中くんがそうしてもいいって言ってくれるみたいに、繋いだ手に力を込めてくれたから。

「電車乗るね」、と田中くんに手を引かれたまま電車に乗って、まだ人がまばらな方な車内、手すりに掴まりながらも田中くんとはずっと手を繋いだまま。
通り過ぎていく景色ばかり見てしまうのは、顔の火照りを少しでも冷ましたかったから。
何も言わない私と、同じように何も言わない田中くん。
「次で降りるよ」と言った田中くんを見上げたら、優しく目尻が下がった彼と目が合って、たまらなく好きだと心臓は跳ねた。

やって来たのはお台場で、観覧車が見える場所。
日も暮れた観覧車は綺麗な光を放っている。
周りにいるのはカップルばかりでどうしてもソワソワしてしまう。向こうのカップルは抱き合っているし、あっちのカップルは肩を寄せ合っている。

「寒くない？大丈夫？」

落ち着かない私をよそに、田中くんが優しく気遣ってくれる。
「大丈夫だよ」と答えると、田中くんは「そっか」とまた繋がれた手に力を少し込めた。

私たちも。…私たちも、そう見られているのかな。
潮風は冷たく髪を靡かせるのに、体温は下がらない。