Feather (ページ37)

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少しすると、遠くからゆっくりと歩いてくるピンク色の髪をした人が見えてきた。…田中くんだ。
田中くんは私に気づいたみたいで、驚いたように目を丸くした田中くんと目が合う。

「樹くん！」

意を決して話しかけようとしたら、私より先に田中くんに声を掛けた可愛い女の子。順番なんか関係なくて、何人も田中くんに話しかけてる。タイミングが難しくて諦めようと思ったけど、なんのために時間を掛けて支度をして遅めに出てきたのか分からない。
ぎゅっと拳を作って私もその輪の中に入って、え？って顔をして私を見ている田中くんに「おはよう」と声を掛けた。

「…うん、おはようAちゃん」
「あの、一緒に学校行きませんか」

見上げた田中くんは、動揺してるのか瞳を揺らす。

「…でも俺昨日」
「大丈夫」
「……本当にごめん」
「大丈夫だから。…行こう？」

そう言ったら、田中くんは困ったように眉を下げた後うなづいてくれる。
「ちょっと樹！」、「樹くん！」、田中くんを待っていた女の子たちが呼び止めたけど、田中くんは「今日はごめん」って彼女達にそう言ってから「行こうAちゃん」と一緒に学校へ行くことを承諾してくれた。

だからと言って、私たちの間に今会話はない。
ただ学校までの道を並んで歩くだけ。でもそれが心地いい。

「今日のAちゃんいつもと違うね」

田中くんはいつも目敏い。
人の変化にとてもよく気付いて、さりげなくそれをついてくれる。多分人をよく見ている分少しの変化にも気付く。
だけどそれは田中くんなりの経験からくるもので、私なんかが計り知れない何かがあって身についたものなのかもしれない。あくまで憶測だけれど。

「田中くんの隣を歩くならちゃんとしないとと思って」
「そんなの気にしなくてもいいのに……」

田中くんは何かに気づいたみたいで、「いや」と続ける。