Feather (ページ36)

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きっとページ36

第一志望の受験に失敗したことが知れ渡るこの学校で、私の居場所は当然三軍だった。

『落ちこぼれ』と言われるのは当たり前で、実際受験に落ちたのだから否定するつもりもない。
高校に入ったからといって何かが変わることもないと思ってた。ましてや誰かに優しくしてもらえるなんて思ってもみなかった。
…田中くんに会うまでは。

彼の名前が田中樹ということを知って、一軍の中のエリートということも知って、バスケ部のエースということも分かって、いつの間にか目で追っていた彼と接点が生まれるはずもない。
そう思ってたけど、この空き地で、今隣で猫缶を食べ終えて毛繕いをしているミケちゃんがきっかけで仲良くなれる未来があるなんて想像すら出来なかった。

先に私が来てミケちゃんを撫でていたら部活帰りの田中くんが来て。
『あの時のAちゃんか』って私を覚えててくれて、それは本当に驚いた。
それから少し会話をして、ミケちゃんを抱き上げながら『これは俺らの秘密ね』って笑う田中くんに胸が熱くなった瞬間だって覚えてる。

だから今日のことはきっと田中くんの中だけじゃ抱えきれないような大きなことがあったんだと思う。
今度は私が力になりたい。
あの時、水の底に沈んでいた私を引き上げてくれたみたいに。今度は私が、きっと力になるから。

翌日、私はいつもより遅く家を出て学校に向かった。
田中くんに会うなら早い時間に行っても意味は無い。早起きが苦手な田中くんはいつも遅刻ギリギリに来ていて、朝練も来ないことは把握していたから。
でも、いつもより遅い時間に家を出たのはある意味賭けでもあった。
田中くんが遅刻ギリギリに学校に来ることは当たり前に知られていて、田中くんと学校に行きたいと思っている女の子が必ず複数人いて待ち伏せをしているのは有名な話だから。

今日の私はいつもと少しだけ違うところがある。
普段は下ろしたままの髪をポニーテールにして、人目を避けるように付けていた伊達眼鏡も外してきた。本当に薄くメイクもしてみたし、家を出る前私を見たお母さんが『今日は随分気合いが入ってるのね、彼氏でも出来た？』と嬉しそうにしていたし多分変じゃない。…はず。

最寄り駅に着くと、同じ制服の髪を巻いて完璧なメイクをしている女の子達が何人もいる。
お互いにちらちらと見てはいるけれど、誰も譲る気はないとばかりに様子を窺っているみたい。深く深呼吸をして、鞄の持ち手を握る拳にぎゅっと力を込める。