Feather (ページ22)

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涼しい顔をしてそう言う北斗に私はまた頭を抱えて。ヒソヒソと聞こえる「あの子だれ？」「知らない」「あいつ二年の三軍じゃん」「全然釣り合わない」「なんであの子なの？」という言葉の数。

いつもなら無視するところなのに、北斗は私を一瞥して深い溜息。
そしてその人達を横目で見る。

嫌な予感が、した。

「いちいちうるせぇな。こっちからすれば、お前らが誰だよ」

ただでさえ威圧感のある真顔なのに、そんな冷たい目で、そんな低い声で言ったらビックリするよ…。
そう思いながら、シーンとする空気に耐えられず、北斗の腕を引っ張って正門からとにかく離れた。

そのまま歩いて数分、大人しくされるがまま腕を引かれた北斗を振り返る。

「北斗」
「ん」
「…ありがとう」
「…は？」
「多分、さっき私を庇ってくれてたから」

さっき北斗はああ言ったけど、本来人見知りの彼がいきなりあんな事言うはずがない。

北斗は耳がいいからどんな音も聞き逃さないし、そういう陰口のようなものにとにかく目敏い。
中学の時から人気があった北斗の隣をほぼ私が独占していた時も、北斗は私を庇ってくれていた。独占と言っても、故意的にしていたわけではない。単に北斗とは波長が合うから、北斗の隣は居心地が良かった。それは北斗も同じだったから、気づいたらお互い隣にいた。それが正しかったけど。

「Aが怒んないのは知ってたけど、ありがとうって言われるとは思ってなかった」
「北斗は想定外に弱いもんね」
「なんか小っ恥ずかしいわ、弱いとか言うな」

視線を逸らすその癖も変わらないことに気づいてホッとする。
二人で憧れていた制服を纏う北斗はやっぱり誇らしくて、あの頃には感じなかった輝きさえ見える。
…今の私には眩しいな、と思う。

「いたっ」
「変なこと考えてたろ」
「…だからってデコピンする？」
「馬鹿な考えしてるからだ」

ピン、と北斗の長い指が私の額を弾く。
額を抑える私に北斗は笑って「行くぞ」と歩き出す。

馬鹿なことって、なによ。
でも本当のことじゃない。
希望してた受験に落ちて、同じ学校に行けなかった私は落ちこぼれなのは事実なんだから。

でも北斗は何一つ変わらずあの頃と同じ距離で話してくれてる。その現実が今はただただ嬉しかった。