彼の中では未だ元カレなので ページ6
テレビのリモコンが手元に転がっていて、なんとなく、伊沢くんが出ているものに回してみた。
「……姉ちゃん、別れたんじゃなかったの？」
すると訝しげな弟の声が飛んでくる。今日は近くまで来たので久しぶりに実家に泊まっているのだ。
歳の近い弟とは反抗期を終えたあたりから仲が良く、伊沢拓司の彼女だという重圧に耐えきれなくなったのを自覚した頃から、ずっと相談してきた。
「未練タラタラってわけ？もう1ヶ月経つけど」
でも、別れを告げるのだと何度も何度も泣きながら電話して散々騒がせておいて、伊沢くんとは友達になった なーんて言えなくて、それは黙ったままだった。
「はは、そうかも」
適当に誤魔化そうと再度リモコンを握ると、充電器に挿したままのスマホが震えた。好きなの見ていいよ、と弟にリモコンを渡して確認に行く。
伊沢くんからの着信だった。こりゃまたタイミングのよろしいことで。
「……ちょっと電話してくるね」
「こんな時間に誰と？」
う、ぼーっとしているようで意外と鋭いんだから。これ以上詮索される前に隣の部屋へ移動してしまおう。そう思って立ち上がると、なぜか弟も一緒に立ち上がった。
「なにその反応……もしかして、伊沢サン？」
自分でも、笑顔がひきつったのがわかった。なんでこんなになんでも顔に出しちゃうんだろう。
「なに、復縁迫られてたりすんの？」
否定する前に、さらに言葉が重ねられる。
「俺出てやろうか？」
「い、いいから！関係ないでしょ！」
関係ない、という言葉にカチンときたのか、ムキになった弟はわたしの手からスマホを奪い取って着信元を確認した上で、勝手に応答した。
確かに、いろいろと相談に乗ってもらったのに関係ないなんて言ってしまったのは100％わたしが悪い。しかし、もし仮に本当に元カレから復縁が迫られてたとしても、そうだったとしてもだよ？さすがに過保護すぎやしないだろうか。
「もしもし、伊沢サンですか？」
……っと、そんなこと考えてる暇はなかった。はやくスマホを奪い返さないと、どんな失礼をするかわからない。
「もう連絡してこないでください、Aが困ってます」
ああ！もう、言ったそばから！
「困ってなんか……！」
「なんでコイツを庇うんだよ」
「だって事実だし、伊沢くんは友達だよ」
弟はわたしが何を言っても聞かなくて、勘違いを捏ねくり回した上で言いたいことを一方的に言って、わたしが弁明する前に電話を切ってしまって、つやつやとしていた。
手元に残されたのは弟にも伊沢くんにもデカい誤解を与えてしまうという、最悪の結果。
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ウィンターくん(プロフ) - 更新うれしいです！ありがとうございます。ここのとこ2話で話がぐっと進んでますね…！ (2021年4月12日 8時) (
レス) id: 6c1e210fc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの。(プロフ) - 初コメントです多分。あまりにも世界観に引き込まれすぎました。ここまで読んで続き！もっと読みたい！早く！ってなりました。読者側がこんなことを言うのも烏滸がましいのですが、文才溢れすぎてもう天才的で他のも読んだことあるのですが全て面白かったです。 (2021年4月10日 21時) (レス) id: 6d66e5d0a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» ウィンターくんさんいつもコメントありがとうございます！これからも頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ゆゆこさん» ゆゆこさん、コメントありがとうございます。楽しみにして何度も読み直していただけたとのことで、とても嬉しいです（ ; ; ）これからはもうすこし更新頻度を上げたいと思ってます！これからもどうかふたりを見守っていてください！！ (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 更新嬉しいです。ご無理なさらず、でもこっそり続きをお待ちしています。 (2021年4月2日 19時) (レス) id: 0f9ee489eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぶっく。
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作成日時：2020年8月10日 23時
