ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ40)

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第8話焦りは色濃くページ40

『ミクリ!!!』

「……A」

ダンっ、と大きな音が響いて扉が開く。
額には汗が滲み、息が切れている。
その姿からここまで急いできたのだということが見て取れた。

それもそうか、先ほど連絡をもらってからまだ数十分しか経っていない。
彼女も、彼女のポケモンも、ここまで最速スピードで来たのだろう。

「急ぐのは分かるけど、もう少し落ち着いたらどうだい」

『急いでるんだから、落ち着けるわけないでしょ……』

滲む汗を拭う彼女に、水を差し出す。
腰に手を当て一気に飲み干す姿を見ながら、ミクリは苦笑いをこぼした。

彼女から連絡を受けたのは先ほどのこと。
突然、"空の柱について聞きたいの！"と言われた時は驚いたものだ。
もちろん彼女はミクリがルネの民であり、空の柱の入口にかかる封印を解くことができるのを知っていた。
それゆえにミクリに連絡をしたのだろう。

『ちょっと緊急事態なんだよね。
とりあえず空の柱について教えてほしくて』

「……とは言っても、昔Aに話したこと以上のことはないけどね」

『それでも、情報を整理したくて』

なるほど、焦っているように見えて冷静なようだ。
さすがは研究者といったところか……物事を冷静に分析しつつ見極めている。

やれやれと肩をすくめながらミクリはAに座るよう促し、また水を差し出した。

「空の柱はね、ホウエンの守り神とも言われる伝説のポケモン……レックウザを降臨させるための祭壇なんだ」

『レックウザは大昔にもこのホウエンに現れたってポケモンだよね。降臨させる…ということは、何か条件とかがあるのかな』

「残念ながらその降臨のさせ方は私も知らないんだ。
それを知るのは……流星の民のみ」

『流星の民？』

「私たちも同じように、歴史を継承する役目を持った人たちのことだ」

流星の民、レックウザ、そして……
今回の事件。
頭の中でそれらの単語を繰り返す。

あのヒガナという少女は何をしようとしているのか。
私に計画を止めろと言いながら、隕石のことに関しては自分たちが丸っと解決すると自信満々に言い放った。

自分"たち"って、いったい誰？
でも話の流れからして考えると……まさか。

『いや、まさかね。
でもそうだと考えれば辻褄が……』

ひとつひとつ、パズルの隙間を埋めるようにピースがはまっていく。
不安は募るばかりで、Aの頬には冷や汗が伝った。