花はそして突然に【sha】 (ページ2)

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一欠片-sha ページ2

雨が多く降る時期だったと思う。しばらく晴れの日が続いていたから、今日も晴れだろう、だなんて、傘を持たずに家を出た。

それが間違いだったと思う。

少し賑やかな街から小さな林を抜けた先にある古い廃墟。最近見つけた、俺だけの秘密基地。家に帰るのが嫌だったから、なんとなくそこに向かった。

いつものように苔むした石段を数えながら雨に濡れていくのを無視して登った。誰にも怒られないからって。やっと登り切った頃、窓も外れた、緑色と錯覚してしまうほどに蔦の巻き付いた廃墟が、「ようこそ」というように目の前の視界に入る。

それと、ずぶ濡れの金色の髪を垂らした女の子と目があった。見惚れてしまうほどに綺麗な青だった。

石段を登り切った先で立ちすくむ俺と、廃墟の前で固まっている女の子。先に動いたのは雨の音ではっと意識が戻った俺だった。

sha「ちょお、ずぶ濡れやん？！なんで傘さしとらんの？！」

『え、は、ちょっと何？』

sha「とりあえず傘俺も持ってへんからこんなか入るで！！」

『え、あのさ落ち着け？？』

自分だけの秘密基地で、人を入れたくなかった、なんて気持ちも無くなって急いで女の子の手を取り中に入る。廃墟といえど、建物だったからか雨漏れはしていなかった。ここで女の子を放っておくほど俺も鬼じゃなかった。