35. ページ35
…集中できない。
仕事中、パソコンの前で頭を抱えた。
『…可愛い』
はやちゃんの昨日の言葉が、頭から離れなくて。
そんなこと誰にでも言うのかもしれないけど！
ただ髪型が可愛くなったねっていうことかもしれないけど！
大人になったはやちゃんに、私はまだ慣れない。
おまけに大輝のことも気にかかるし。
何考えてんのかよく分かんないし。
昼休みを知らせるチャイムが鳴った。
午前中のうちに終わらせようと思ってた資料の山に
はあ、とため息をついた。
…
『…あれ、』
「うわ、大輝」
『うわって何だよ』
お昼休み。
財布を片手に外に出れば。
ちょうど大輝と鉢合わせする。
手には近くのカフェのコーヒー。
「大輝のせいで残業…」
『え？何？』
「何でもない、じゃね」
意味の無い八つ当たりをしても私の仕事は減らないし。
いつも通り、平常運転の大輝がちょっとムカつく。
『髪、いいと思う』
「へ…？」
無表情で淡々と言うから、褒められてることに気づくのが
ほんの少し遅くなって。
でも、嬉しい。
『似合うと思うよ』
「ほんと？ありがとう…！」
『随分ご機嫌だね』
大輝が、はは、と笑う。
だって、私が褒められたように見えて。
「はやちゃんがやってくれたの！」
似合う髪にしてくれたのは、はやちゃんだから。
大輝がはやちゃんを褒めてくれたように感じて、
余計に嬉しくて。
『はやちゃんって…幼馴染の？』
「そう、はやちゃん美容師さんだから！」
『そっか、仲良しだねえ、幼馴染くんと』
「うん、まあね」
『じゃ、また』
幼馴染くん、なんて含みを持たせるような言葉に、
違和感をちょっとだけ感じたけれど。
褒めてくれたことの嬉しさに、その違和感もすぐ忘れた。
大輝が、何を感じていたかなんて知らずに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 319人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あかり(プロフ) - 。さん» はじめまして！そう言っていただけて嬉しいです！励みになります。これからも最後までお付き合いください◎ (2017年10月25日 8時) (
レス) id: 7a52df4d5b (このIDを非表示/違反報告)
。 - すごく凄く面白くて表現がとても綺麗で読んでいてきゅんって、できるような作品でとても好きです。 (2017年10月25日 0時) (レス) id: ff129d1410 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あかり | 作成日時：2017年9月24日 0時
