あの謎が明かされる時 ページ28
―また来た。
あの日通知に気付いて以来定期的に電話がかかってくる。
見知らぬ番号故に出ることはないものの、同じ番号から何度も着信があるのは流石に気味が悪い。
福本「おはよう！」
A「あ、おはよ」
着信拒否を検討し始めたところで福本くんが現れ、すぐにスマホをポケットにしまった。
野外イベントに向けて始まった土日練習。
時間通りに集合したのは私と福本くんだけ。
相変わらずのルーズさに驚かされる。
福本「明日何するん？」
A「え？特に何もせえへんで」
明日の午後は学校が閉まっている為、必然的に部活も休み。
ゆっくり家の掃除でもしようと思っていた。
福本「…会場の下見行かん？」
A「下見？」
今回のイベントの会場は新しくできたばかりの記念公園。
それなりの面積の芝生とちょっとしたアスレチックが設置されており、写真で見る限りかなり雰囲気の良い場所。
A「ええけど」
福本「やった！じゃあ…」
彼の言葉は途中で遮られてしまった。
佐野「おっはようございまーす！」
草間「ちょ、お前声でか！」
続々と集まりだした部員達。
ようやく本格的な練習が始まる。
佐野「何の話してたんすか？」
福本「いや…」
A「明日の午後会場の下見行こって」
草間「ええやん」
佐野「俺も明日空いてます！」
下見に行くことが決まりやる気を出したのか、その日の練習はいつも以上に捗った。
―と言っても集まったのはこの4人だけだったけど。
リチャ先輩によるサックスのパートを練ったり、
正門くんのギターソロをどの曲に組み込むか考えたり、
福本くんのベース練習に皆で付き合ったり。
佐野「うわ〜ここむずいっすわ」
福本「結構激しいもんな」
佐野「リチャく〜ん」
草間「俺に言わんでよ！俺ドラムできんし！！」
A「…1個聞いてもいい？」
その時、出会った当初から感じていた疑問がふと浮かんだ。
A「何で"くん"呼びなん？」
佐野「めちゃめちゃ今更っすね」
A「聞くタイミング逃しててん」
末澤先輩もリチャ先輩もどちらかといえば"怖い上級生"の部類。
それなのに2年生の3人どころか佐野くんでさえも"誠也くん""リチャくん"と呼んでいる。
初めの頃、そう呼ばれる2人を見る度にいつかキレ散らかされるのではないかとヒヤヒヤしていたのを思い出す。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
