危険が潜む帰り道 ページ15
A「そもそも私聞いてへんけど」
本番2日前の帰り道。
学校が許すギリギリの時刻まで練習を続けた為、外は既に暗い。
街灯の明かりが私達を照らす。
A「どこでライブするん？」
初めて全員が部室に揃って以来、遅刻や早退はあるものの何だかんだで毎日全員が顔を出している。
あんなに集まらなかったのがまるで嘘のよう。
福本「あれ？言うてへんかったっけ？」
結局あの日も遅くまで練習し、ラーメンを食べに行くことは叶わなかった。
本番が終わったら皆で食事にでも行けたらええなあ、なんて以前の私なら絶対に考え付かなかった発想が巡る。
福本「晶哉の兄ちゃんの知り合いがライブハウスで定期的にイベントしてて、そこに出してもらえるらしいで」
A「へえ〜」
佐野くんの兄が何者なのかはさておき、小島くんの言葉がふと脳裏に浮かんだ。
"青春"だなんて少しクサいけれど、あの場にいた私にとってそれ以上の言葉は見つからなかった。
長い人生の中でたった3年間しかない高校生活において、今しかできないことに全力で打ち込むのは紛れもなく"青春"だ。
もう二度と音楽に関わることはないと思っていた。
こうして無理矢理入部させられなければ日々の充実感も上手くいった時の達成感も得られなかったのだと思うと、末澤先輩にはほんの少しだけ感謝している。
―末澤先輩。
彼が一体何を考えているのか私には全く分からない。
あの日部室で私の腕を掴んだ彼は何を言おうとしたのだろう。
佐野くんが入ってこなければどうなっていたんだろう―
福本「けどAちゃんほんまにすごいよな！」
A「え？私？」
福本「やってさ、あんだけギターできて歌も上手いし」
A「福本くんも頑張ってるやんか」
福本「ちゃうやん、俺らは練習してやっとギリギリ成り立ってんのにAちゃんは最初っから才能ある感じやん？」
A「うーん…」
目をキラキラと輝かせる福本くん。
福本「俺最初誠也くんに"Aちゃん誘う"って言われた時、なんでこの子なんやろ？ってずっと不思議やってんか」
それもそのはず。
末澤先輩以外は私を知らないから。
福本「けど初めてAちゃんの歌聞いた時めちゃめちゃ感動してさ、誠也くんが選んだんも納得やなあって」
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
