風紀委員長のわんこですが (ページ10)

今日:1 hit、昨日:10 hit、合計:35,688 hit

9匹目　戦わなければ生き残れない!② ページ10

大きな本棚に入れられた何冊もの本が私をじっと見つめる中、空の椅子の列がやけに静寂を引き立てた。

委員長が目で示したそこは、図書室だった。

…さて、あの人が私に任せたものは………

『ひっ』

読書スペースの机の付近に動かなくなったヤンキーが3人ほど積まれていた。

……あー…これかあ。

明らかな汚れ仕事に肩を落としたとき、

じとーっとした視線を感じて右を見た。

花柄の可愛らしいエプロンをつけたおばあさんがこちらを睨んでいる。

彼女の前にあるカウンターには、「図書室では静かに！」という張り紙が見えた。

『(すみません)』

口パクで言うと、おばあさんは何事もなかったかのように手元の本を機械に通す作業に戻った。

このヤンキー達も図書室で騒いでいたのかもしれない。

おばあさんひとりでは手に負えないほどうるさい彼らを、委員長が咬み殺す図は簡単に想像できる。

さあ、私も仕事をしなければ。

……って、どうやって！？

この人達を処理すればいいんだろうけど、一体どこに？ゴミ箱に入るサイズじゃないし……

いや、人はゴミ箱に捨てちゃだめか。

こんなこと考えるなんて委員長に毒されてる……！？

はぁ。
脳内で茶番を繰り広げている場合じゃない。

よし、こういうのは草壁さんに聞こう。

そう思って図書室を一旦離れようとすると、

ガラッ

扉が開いた。

入ってきたのは草壁さんだった。手の中には2冊の小説。

あ、どっちも委員長が昨日読んでたやつだ。

「…！」

草壁さんは軽く会釈した私に気づいて少しだけ微笑む。

そして、その後ろで積まれたヤンキーを見てなるほどといった顔をしてゆっくり私に近づいた。

「これ、返却しておいてくれるか」

小声でそう言って私に小説を任せると、足早に図書室を後にする。