風紀委員長のわんこですが (ページ27)

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26匹目　夏祭り② ページ27

『はぁ…はぁ……委員長、まってくださ、』

屋台を飛び出したはいいものの、呼ぶ声は人の波に消えていく。

見失わないようにするのがやっとだった。

ドンッ

『すみませんっ』

反対方向へ歩いていた女の人にぶつかってしまった。

『あれっ！？』

そちらに気を取られた隙に、委員長が先ほどまでいた位置にいなくなっている。

どこ行っちゃったんだろ…

私は必死に探す。

たこ焼き、フランクフルト、チョコバナナ

ううん、屋台にはいないな

じゃあ、その先の――

『あっ！』

やっと見つけた委員長は、人込みを抜け、緑の多い高台を登っていった。

『通ります、失礼しますっ』

わさ…

私は低木から顔を出す。

委員長、こんなところに何の用事だろう

下で騒ぐ人々の声は小さく、とても静かな場所だった。

ずさっずさっ

足場の悪い中進んで行くと、頂上の開けたところに

『あっ』

木に寄りかかる委員長がいた。

『――――――』

私の声は聞こえなかった。

空に花火が上がったから。

『(わあ…)』

夜空に咲いては散っていく大輪と、

半袖シャツについた"風紀"の腕章を交互に見る。

かすかな風に揺れる黒髪。

狂いのない円を描く赤い光。

軽く組まれた長い脚。

ぱらぱらという消えていく音。

こんなに綺麗な花火は初めてだった。

『――！？』

何度目かの往復で、こちらを見る鋭い瞳に気づいた。

「――、――――――」

委員長の口が動く。

近づけばわかるのだろうが、私は後退り。

じりじりと向かってくる委員長。

うわっ

背後に迫る崖に気づかなかった私は、足を滑らせてしまった。

ぱしっ

「ここ、僕以外立ち入り禁止のはずだけど」

急に手首を掴まれて、

耳元で声がする。

ドンッ
ぱらぱら…

足元を見たまま、私はまだ委員長の顔が見れないでいる。

私の顔は真っ赤だろうか

花火に照らされただけだと言い訳できるだろうか

「Aちゃーん！どこにいるのー？」

そんなときに下から聞こえた屋台主の声。

私ははっと我に返る。

『あああ、ありがとうございます

す、すすす、すみませんでしたああああ』

私は目を合わせずに委員長の手を振りほどき

高台から転がり落ちた。

その後帰った屋台で"あの"雲雀恭弥から代金をもらおうなんてとんでもないことなのだと知る…