魔の山２

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そして、水の柱の上で見つめ合うのはヤブとヒカル―――。
司教の姿からヤブへ、ウェディングドレスのヤオトメ姫は騎士ヒカルの姿へ。

元の自分を取り戻したふたりは、下の騒ぎなど気にもとめずに見つめ合った。


「なぁ、迷惑だった？ 王妃の人生の方が良い？」

「う……ううん……。ヤブこそ、本当は、姫の方が……良いんじゃね？」

「あんなブサイクな王子の物になった姫の方がって？ ふざけんなよ、オレが好きになったのは今目の前にいる騎士のヒカルだ――ほら」


マントの中から手渡したのはヒカルのレイピア。
ヒカルが愛剣を凝視する。


「なにが形見だ、ふざけんな。そんなの何十年も先のことだろ。そんときゃお前の墓標代わりにオレがそれ地面に突っ立ててやるよ」


ジッと剣を見ていたヒカルが、その意味に気づいたのか顔を上げてニヤリと笑う。


「ざけんな、おまえの墓標に立てるのはオレだ――ヤブ。どっちが先に逝くか競争だなっ！」

「こりゃ長い戦いになりそうだな――」


物騒な言葉とは裏腹に見つめ合い続けるふたりに、親衛隊と剣を交えていたユウヤが叫んだ。


「ちょっとおふたりさーんっ！ そろそろ参戦してくれねぇ？ オレちゃんマジでヤバメなんだけどーっ！」

「悪りぃユウヤ――よし、やるかヒカルっ！ 自由を求める戦いってやつだっ！」

「おう！！ ――この水柱はユート？」

「そーだよーん！ じゃあおふたりさん、降ろすね！」


水柱の中から優麗にユートが現れ、滝が流れてふたりを教会へ降ろした。
そこへ親衛隊が剣を向けるが、ヤブはともかくヒカルは元はヤオトメ姫。
怯む兵士達に、王が叫ぶ。


「そのものはもうわしの娘でも姫でもない、ただの不届き者だっ！ 捕らえて罰を与えよっ！」

「おっとヒカル、お墨付きが出たぜ。ここを無事に逃げおおせればおまえもう自由だ！」

「ああもうオレは二度と姫になんかならねぇよっ！ イノちゃんはどうするっ！？」


親衛隊の剣とやり合いながら、ヒカルが叫ぶ。
イノーは襲ってくる親衛隊から逃げ回り、柱の陰から言った。


「えぇ、オレぇ。オレはこのままのんきに城で暮らしたかったけどぉ……まぁヒカルが出てくって言うならオレも一緒に行こうかなぁ、もうケイ姫じゃないってバレちゃったしぃ――
じゃあケートくんっあとよろっ」

「え、ケート？」



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