012 ページ13
コンコン、とノック音。
｢勝己、入るよ？｣
｢あぁ｣と枕に顔をうずめたまま返事をすると、扉が開いた。
｢……水持ってきたんだけど、飲む？｣
トレイの上に水と、ヨーグルト。申し訳程度に胃腸薬。
後ろ手に扉を占めると、トレイをテーブルの上に置き、Aはテーブルの横に正座した。
｢…………｣
ベットに寝転がっていた勝己は、もそもそと起き上がる。
｢水｣
｢はい｣
グラスの中の水を一気に飲み干すと、トレイに置く。
｢ごめん勝己、その、不味かったでしょ？｣
申し訳なさそうに、しょんぼりとするA。
昔から見慣れた光景だ。デクもそうだが、Aも昔からおどおどとしていた。
｢別に……俺が好き好んで食ったんだからいーんだよ｣
｢でも、気分悪くしたの……私のせいで｣
｢別に不味かったから気分悪くしたわけじゃねーよ。単に食べすぎただけだ｣
｢で、でも｣
ばっと顔を上げるAのデコに向かって、デコピンをする。
｢いだっ｣
｢っるせーよ、俺がいいって言ってんだから素直に従っとけ三下クズ｣
｢……｣
｢んだよ｣
黙り込んでしまったA。
すると不意にAの白い手が勝己の頬に触れた。指でつまむと、横に伸ばす。
｢……なにすんだよ｣
Aただ、ニッコリと微笑んで、
｢勝己は優しいね｣
と言った。
｢っるっせー調子乗ってんじゃねーぞクズ！｣
手を振り払うと、Aは声を出して笑いながら、｢ごめんごめん｣と言った。
そして勝己がヨーグルトを食べ終わるのを待ってから、カラになったグラスとヨーグルトと、使わなかった胃腸薬を載せたトレイをもって、
｢それじゃ、お大事に。おやすみ勝己｣
と言い残して出ていく。
｢畜生……｣
なんだか
なんでだかは知らないが。
奴の笑う顔が頭について離れなかった。
きっと、あれだ
｢腹が立つ…｣
からだ。
そう、ただそれだけ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 90人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はっしー - 泣けますね。ラストが、、、、、。爆豪君も結婚して、、、。意外です。面白かったです。 (2017年8月14日 4時) (
レス) id: 789bdf4173 (このIDを非表示/違反報告)
天照月夜(プロフ) - 泣いたァ (2017年7月26日 3時) (レス) id: d4fab0f3f8 (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - まーやさん» コメントありがとうございます…！ラストは結構悩んだんですけど報われない感じになっちゃいました…。切なさを感じてもらえたのであれば幸いです！ (2017年6月11日 15時) (レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
まーや(プロフ) - 死んじゃうのぉぉぉぉぉぉぉ！？切ないですね！←(空気ぶち壊し) (2017年6月11日 10時) (レス) id: 54dce99bb8 (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - 残念なイケメン系女子さん» コメントありがとうございます！誤字指摘ありがとうございます、修正しておきました！ (2017年6月11日 10時) (レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：漱 | 作成日時：2017年4月23日 14時
