表情とは。 ページ43
No side
織田は太宰を見る。
視線に気づき、側頭部の傷を指で確かめながら笑う。
「悪いね、吃驚させて。迫真の演技だったろう?」
太宰は、相手が狙いを外すのを最初から判っていたと告げる。
それに対し、織田は返事をしない。
ただじっと、笑って説明する太宰を見た。
「あとは会話で時間を稼いで、奴の腕が疲れるのを待つ。ゆっくり近寄れば奴はすぐには撃たない。後は織田作かAが何とかしてくれる。そう踏んだのさ。合理的だろう?」
「そうだな」
それだけ言い、Aを見る。
自分の銃に弾を入れていた。視線に気づき、「織田作?」と不思議そうな顔をする。
織田はAの前で中腰になり、ハンカチを取り出すとそれを血が流れる頬へと当てた。
「大丈夫か?」
『へーき。慣れてるし』
"慣れてる"
その言葉を聞き、複雑な気持ちになった。
けれどそれを表に出すことなく、「そうか」と言いAの血を傷口に触れないよう丁寧に拭く。
「あまり無茶をするな」
『してない』
「してるだろ。腕が使い物になっていなかったとは言え、一歩違えば死んでいた」
Aは言葉を返せず、ムスッとした表情で口を閉じた。
横でやりとりを聞いていた太宰が「まぁまぁ」とあやすように言う。
「Aは私を守ろうとしてくれたのだよ。私にも責任がある」
『期待を裏切るようで悪いとは思わないけど、別に太宰を守ろうとはしてないから』
「泣く」
「大人気ないぞ、太宰」
呆れられたように見られ、太宰のライフは0に等しかった。
織田の天然っぷりは健全である。
Aにハンカチを渡し、安吾の調査へ戻ると告げて2人に背を向けて歩き出した。
一歩踏み出すごとに、先程の出来事が頭に浮かび、目の裏に焼き付いた。
太宰が額に指を置いて銃口に近寄っていくときの、泣き出す寸前の子どものような表情が。
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RANA(プロフ) - 花雫@浮上中さん» ご指摘ありがとうございます! (2018年1月9日 0時) (レス) id: 4350057b28 (このIDを非表示/違反報告)
花雫@浮上中(プロフ) - あんの青鯖野郎です!えっと唐突な間違い指摘ごめんなさい (2018年1月8日 2時) (レス) id: f3cc68df07 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - えーなさん» 14巻。表紙最高でしたね!次巻はやく販売しないかな()そして来年には映画ですね!それも楽しみなんですよ〜!! 続編、さっそくできました。応援ありがとうございます!頑張ります! (2017年12月10日 19時) (レス) id: 4350057b28 (このIDを非表示/違反報告)
えーな(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!14巻見ました!乱歩さんメインで私も幸せでした〜!そしてまさか探偵社の今後がめちゃくちゃ気になる終わり方で…!すみません、漫画の話はここまでにします笑 続編楽しみにしてます!頑張ってください! (2017年12月10日 19時) (レス) id: 2f759f2211 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - まゆさん» ありがとうございます!頑張ります! (2017年11月16日 22時) (レス) id: fcafb99727 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2017年11月5日 22時