【文スト】参謀とは。2

絶賛不機嫌中とは。 ページ28

No side


ドガッと鈍い音が地下牢に響いた。


殴られた男は口から血を吐き、せき込むと同時に一本の歯が出た。


自分を殴った人物を睨むようにして見上げる。
その者は男を冷たく見下ろし、金色の瞳と目が合った。


『はやく話してくれない？今の私、あの包帯のせいで気がそんなに長くないンだよね』


不機嫌そうな声が男の耳に良く届く。

男は改めて驚愕した。


"少女"が自分を拷 問している事に。


十代半ば、といったところだろうか。
その少女が歯を折る程の打撃(パンチ)をかまし、大の男の拷 問をしているのだ。


『お願い、マジではやくして。キャラメル不足で死にそう』


言っている事がかなり変だが。


男は絶対に言わんとばかりに歯を食いしばる。
それを見た少女はため息をついた。


『...今度は2本いく？』


苛立っているのか、表情が険しい。
指の骨をポキポキと鳴らす。

周りにいる構成員達が思わずたじろぐ。


ビリビリと体に殺気が当たるのを感じる。


男は歯を食いしばるのをやめ、呟く様に言い放った。


「"ミミック"」

『...それって、組織の名前？』

「そうだ」


聞き慣れない言葉、聞いたことのない組織名。

少女は顎に手を当て思考を巡らす。


すると、構成員の一人の携帯が鳴った。

緊迫した空気の中、不意を突かれたのか慌ててそれに出る。何度か返事をした後通話を切り、少女の方を向く。


「徳永さん。あと5分程で太宰さんがお見えになります」


少女＿＿徳永Aは「やっとか」と首を回しながら呟いた。
そして欠伸を一つする。


『本ッ当、人使い荒いんだよねぇ。来たら股に蹴り入れてやる』


その場の男全員の顔が青く鳴った瞬間だった。


突如、何かを噛んむ様な音がした。途端、男が苦しそうにもがき、呻く。

Aは目を見開き、弾かれた様に男の襟を掴んだ。


『出せッ！』


しかし時は遅く、男は意図が切れた様に動かなくなった。

首筋に手を当て、脈を測ろうとしたが、その脈自体が感じられない。息絶えたことが分かった。


Aは男から離れ、「最悪...」と前髪をくしゃっと掴む。
更なる殺気があふれ出た、その時。


「如何したんだい？」


聞こえた声に、構成員達は姿勢を正す。
Aはゆっくりと後ろを向いた。


そこには、黒の外套を肩にかけ、ほぼ全身に包帯を巻いた少年。


『太宰...』

「やぁA！随分不機嫌そうだ＿」

『手前のせいだよ阿呆幹部』


Aは太宰の鳩尾に蹴りを食らせた。

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