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今日一日彼の様子を見ていて分かったのは、膨大な量の仕事を請け負っているということと、彼の信じ難い程の集中力。心身共に疲弊しきっている中でうたた寝ひとつ、欠伸ひとつすることなく手持ちの仕事を捌いていく。
はて、マフィアとはこんなにも執務に追われる身であっただろうか。その姿はマフィアの構成員というよりもお役人や弁護士のようだった。
「私が知ってるマフィアというのは、お外に出てはた迷惑にもドンパチやらかす野郎共なのですがトントンさまはこう…大暴れ! みたいな事はされないのですか」
「せえへんわ、その辺のチンピラマフィアと一緒にすな」
「でもフューラーファミリーといえば、聞く話はどちらかといえばそういった系統かと」
「……そういう奴もおるってだけや」
そうですか、と返して床に散らばる書類を数枚拾い上げる。うち一枚を読んでみると、街で暴れたフューラーファミリーの幹部三名が破壊した諸々の修繕費についての書類だった。ぐしゃくしゃに丸められたそれは恐らくトントンさまの怒りの現れだろう。成程、やはり大暴れはされているようで。
午後八時。夕飯を持って執務室に戻ったのだが彼の周りには相変わらず高い山が積まれている。私はずっとここにいる訳ではなく、たまに生存確認とついでの珈琲を差し入れる程度であとの時間は他のメイドさん方のお手伝いをして回っていた。しかしここに来る度彼の部屋の書類は何故か嵩んでいっているように見えるが、気の所為だろうか。
「……トントンさま、私が見ていない間にお仕事増えてます?」
「そりゃ、仕事は毎日増えるやろ」
「そういうレベルじゃ、……はあ。一先ず、お夕飯にしませんか。そして食べ終わったらお風呂に入って、寝るんです。業務終了時間はとっくに過ぎていますから」
私の仕事はトントンさまのお世話、私にも私の仕事があるのだから従ってもらわなくては困る。いや、立ち場は私が従う方だけれども。
トントンさまが片時も手放さなかったペンをすぽん、と抜き取って、食事を並べたテーブルを指差す。はよ食え、と。彼は渋々ながら重たげな腰を上げたが、その顔は絶対にあとで仕事に戻る顔だ。残念、今夜はゆっくりお休みになってもらいますよ、ご主人さま。
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紫紅兎(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがちょうどいい感じに濃くて素晴らしいですね!tntn様との絡みも大変微笑ましいです…過去に何があったのかも楽しみで色々考察しちゃいます、読むたびにマフィアパロって良いなぁと堪らなくなります、更新楽しみにして待ってます (2021年7月3日 1時) (レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - あの………語彙力ないので簡潔にまとめるとですね……………とっっっっっても好きです。 (2021年5月27日 19時) (レス) id: 19366b94fd (このIDを非表示/違反報告)
リュウ - ヤベェおもしれぇですよ(?)更新頑張って下さい!!!!好きです!!! (2021年5月24日 22時) (レス) id: fa1fb43e66 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 夜空さん» 夜空さん、コメントありがとうございます~~! かなりキャラが濃い夢主ちゃんなので尊いとまで言っていただけてとっても嬉しいです! ゆっくりではありますが更新がんばります~~! (2021年5月16日 20時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - ゆゆゆゆゆ夢主ちゃんが尊い(*´ω`*) そうゆう性格の女の子の方が私は好きだよ←(何目線??)更新頑張って下さい!!!!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 947663e2d0 (このIDを非表示/違反報告)
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