行き場のない拳 ページ10
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結局。グルッペンは問い詰めようともあれ以上口を開くことはなく、私が答えをせがむことを諦めたあとは二人揃ってひたすらにパソコンを睨み続けた。何とか全て片付いたものの、私の心内はにはもやもや、霧がかかったまま。
案の定って、なに。私がトントンに振られることは想定内だったと、そう言ってグルッペンが笑う理由。思いつく可能性としては、裏でトントンが私の陰口を言っていたとか。｢俺、ほんまはAのこと嫌いやねんな〜。あいつまじ腹立つやん〜｣なんて。
｢何十年もトントンの側にいてその物真似のクオリティはどうなんだ？｣
｢えっ、口に出てた？｣
｢ああ。お前は一度本気でトントンにしばかれた方がいいと思うぞ｣
｢いや結構しばかれてますけど｣
あれ、トントンってこんな感じじゃなかったっけ？いやそれよりも、仕事は終わったのにこれでは何だかすっきりしない。時刻は……十九時。夜はまだまだ長いだろう。口を滑らせるには、酒がいい。
｢グルッペン、呑みに行こう｣
｢じゃあな｣
｢ちょちょい、グルッペンさん！？ねえ、呑み行こうって、｣
｢いつにも増して嫌な月曜だったな。草臥れた。今夜は早めに布団へ潜るとしよう｣
｢耳ついとんのかこのっ……こ、このっ、……あ、あんぽんたん！｣
｢お。ここ、誤字｣
｢え｣
何か、何か悪口を…！と業務中以上に頭を回したがひとつも思い浮かばないこの男の非の打ち所のなさ。更にはちらりと私のデスクに視線を落とし、数秒のうちに不備を発見するこの目敏さよ。グルッペンが指でなぞった書面には確かにおまぬけな誤字がひとつ。
｢また明日｣
｢あっ、ぐる、ちょ、すぐ！すぐ直すからあ！｣
そんな私の叫びは、人気のないオフィスに虚しさを添えて響き渡る。グルッペンは私を置いてそそくさと出ていってしまった。有り得ない。せめて、せめて、もう夜だから一緒に帰るか、くらい言ってくれたっていいのに！
ぽつりと取り残された私はガシャンッと遠慮なしに音を立て椅子に沈み込む。トントンも、グルッペンも、なんなんだ。もうちょっと私に優しくあれ。
天井をぼうっと見上げ、深い、深いため息を吐き出した。そうして握りしめた拳は、さてどこへぶつけようか。
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るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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