涙を笑う幼馴染 ページ1
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⎯⎯⎯五連敗目。
「私のなにが悪いっちゅうねん!?どいつもこいつも!」
「悪いところを自覚してへんところやろ」
「じゃあトントンが言ってよ、私の悪いところ」
「おー。いっぱい出てくるで」
大号泣で幼馴染の家に押しかけた、金曜日の深夜。
片手に引っ提げた土産の缶ビール数本と、涙でぐちゃぐちゃに化粧崩れしてしまった私の顔を見て、この男⎯⎯⎯トントンは腹を抱えて笑いながら私を招き入れた。
こんな時間に迷惑だ、帰れと言わないあたりまだ優しさがあるのかもしれない。しかし、いくら幼馴染といえども、こうも悲しみに悲鳴をあげる私を見て愉快そうに笑うなんて。
「ひとつ、遠慮を知らんとこ」
「……いやそれ、トントンにだけだし」
「ふたつ、後先考えへん猪突猛進すぎるとこ。猪か」
「はあ!?女の子に向かって猪はなくない!?」
「だからろくでもない男しか捕まらへんねん。相手のこともよう知らんで、好きって言われりゃ好きになるんやろ。あほやわ、お前」
呆れ顔。そんな幼馴染の言葉にぐっと押し黙る。
「まだあるで。お前は⎯⎯⎯」
「も、もういい!もういい!泣きそう!」
「ふは、もう泣いとるやんか」
「喧しい"……」
けらけら、けらけら。そんなに私が男に振られたことが愉快なんだろうか。このたった一年の間に五連敗、どれもこれも私が振られた側。そりゃ確かに笑いたくもなるかもしれないが、笑っていいのは当の本人だけである。
「……可愛い幼馴染を慰めようって気はないの?」
「慰めたってまた同じこと繰り返すんやから損やろ、損」
「おに、あほ、どうてい」
「はいはい」
「恋愛のれの字も知らん癖に!トントンのばあか!」
「勝手に言ってろ」
いや本当に。なんで私はこの童貞にこんな、上からものを言われているのだ。無性に腹が立ってきた。
大昔に私がUFOキャッチャーで取ってあげた、もうすっかり草臥れた豚のぬいぐるみを抱えてソファーに転げる。拗ねた、こいつに泣きついた私が阿呆だった、ばかとんとん。
「そうやってすぐいじけるところもやな」
「わたしのHPはもうゼロよ……」
「バリ少ないHPも問題やな」
「ああいえばこういう!」
豚のぬいぐるみをぐにぐにと引っ張り、抱き潰し、そうして彼の頭めがけてぶん投げる。
「物に当たるところも」
「……撃沈」
見事にキャッチして意地悪く笑うトントンに完全敗北。
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るな? - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました!ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか!? (2022年3月5日 2時) (レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜!みんなドキドキしてくれ!の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…!本当にありがとうございました! (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜!イッキ見!楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…!最後までありがとうございました! (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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