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ふと気が付けば、私はまた別の場所に立っていた。つい今しがたまで轟いていた音の一切が消え、ピクリとも動かない人の山がそこかしこに転がっている。
そんな中、たった一人立ちすくむ彼女の姿を見つけた。大きく肩を上下させ、傷だらけの身体を剣で支える彼女は、確かにその時生きていた。
しかし、私は知っている。
もう、全てを思い出していた。
「ッ逃げて！！」
私のその声が彼女に届くことはない。それでも、叫ばずにはいられなかった。此処で彼女がもう少し遠くへ逃げていられたら、きっと結末は変わっていたのだろうから。
叫び声を上げて、数秒後。
ゴウン、と鈍く脳が揺れるような音がくぐもって聞こえ、思わず目を瞑ってしまう程の爆風がありとあらゆる物を巻き上げ吹き飛ばした。
実際はそんな音では無かったはずだ。けれど、その音に一瞬にして鼓膜を貫かれたあの時の私には、そう聞こえていたんだろう。
反射的に目を瞑り、そして開けた時にはまた違う景色の中にいた。
踏み荒らされていない雪の上に這いつくばって、ゆっくり、ゆっくりと匍匐する彼女の姿がある。さっきの爆風のせいで、かなり遠くまで飛ばされてしまったようだった。背中は焼け、雪は真っ赤ににじむ。それでも何とか前へ進もうとする彼女が腕を伸ばし、そして漸く掴んだのはトントンが彼女に託した剣。
「……っ、とん、と、」
掠れきった声で彼を呼び、きゅっと掴んだ剣を引き寄せる。私はそんな彼女の傍にしゃがみこみ、そして傷だらけになってしまっていた彼女の手にそうっと自分の手を重ねた。
「…大丈夫だよ、私。トントンは、ちゃんと来てくれるから」
約束を破ってしまったのは、私の方だ。でも、優しい彼の事だから、きっと酷く自分を責め立てたんだろう。
トントンはこんな私に「幸せにする」と誓ってくれていた。お互い軍人だから、一生なんて事は言えないけれど、それでも自分なりに精一杯幸せにするから、と。だから傍で護らせてくれ、と。一緒に生きていこう、と。
私ね、確かに幸せだったよ。
貴方に愛されて、愛して、本当に幸せだった。
雪の中は酷く冷たくて、寂しくて、怖くて、今すぐにでも抱きしめて欲しいと思ってしまった。でもね、貴方が私を見つけてくれるって、信じてたから。私は安心して眠りについたの。
最期に見えた空は燃えるような茜色で、少し、貴方の瞳に似てるな、なんて思いながら。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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