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そんな彼の姿にあれ？と首を傾げる。やり取りを聞いている分には二人の関係はあまり良好には見えなかったが、トンくんのその目は私の見慣れている柔らかなものだ。
じゃあ、彼女が一方的にツンケンしてるだけなのか。成程、可愛くない。世界が違うと隣にいても、こうも変わってしまうものかと苦笑いしてしまった。
＿＿＿＿ぱちり、とゆっくり瞬きする。すると、私は何故か見慣れない街の中に立っていた。
空は暗く、足元には降り積もった雪。遠い外国を思わせる煉瓦造りの家々が立ち並び、道端にポツポツと構えられた街灯の淡い光が静まり返った小道を照らしている。
一瞬にして変わった風景に驚き声を上げそうになったが、さく、と雪を踏む音が聞こえ咄嗟に両手で口を塞いだ。
誰かいる、そう思って振り返れば、そこには先程の二人の姿があった。
「……怒ってます？」
「当たり前やろ。どれだけ心配したと思っとんねん」
彼女の手を引きずんずんと雪の中を進んで行くトンくん。彼の表情は険しく、眉間には深い皺が刻まれている。彼女の方はといえば、さっきの車椅子には乗っておらず、首元に真っ赤なマフラーを巻いて少し困惑したように眉を下げていた。
そんな二人の跡を追おうと一歩踏み出せば、それと同時に彼女がピタリと足を止めた。手を繋いでいたので急な停止にトンくんが後ろへとよろける。
「っお、い、危ないやろ」
「……ごめんなさい」
「え、」
ぽつりと彼女が零した謝罪の言葉にトンくんが足を止めた彼女へと振り返る。トンくんは驚いたような表情を浮かべ、それから俯く彼女に何と言葉を掛けようか悩んでいるのか、視線を右へ左へと泳がせた。
「……なんで、あんな事したん？」
悩んだ末に絞り出した言葉は、とても優しい声で語られる。
「大切だと、思ったから」
＿＿＿＿大切だと、思ったから
彼女が答えを出すと同時に、私の口も無意識に動いていた。重なったそれは声も、言葉も同じ。
……そうだ、とっても大切に思えた物だった。
ゆっくりと自分の中に彼女の記憶が、私の記憶が顔を覗かせていく。
彼女の片手に握られていた真っ赤なリボン。何の変哲もないそれは、昔"彼"が私の髪に結んだもの。初めて"彼"から貰った物だったから、私はそれがとても大切な物のように感じていたのだ。
「手放したく、なかったの」
あの時、私は知らなかった。その私の言葉に、彼があんなにも顔を真っ赤にしていたなんて。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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