理解不能 ページ5
.
這いずって来た私へ注がれる冷ややかな視線には無視を決め込み、何とか辿り着いたローテーブルに突っ伏した。まだちょっと気持ち悪い。
じり、と視線だけソファーの方へと向ければ、長い脚を組んで部屋をキョロキョロと見渡しているトントンが見える。別に普段と変わらないのだが、何か珍しいものでもあるんだろうか。
「ちっさい家に住んどる割には高価そうなもん置いとるなぁ。貴族なん？」
「馬鹿にしてる？」
「え？」
「え？」
彼はこてん、と首を傾げ、不思議そうに目を瞬かせる。
いや、今絶対馬鹿にしたよね？そりゃお世辞にも高収入とは言えないお給料で生活してますけど、そんな言い方しなくったって。
「ま、まぁ……とりあえず、ずっと聞いとるけどここが何処なのかをまずは教えてくれへんか」
「どこって、大阪でしょ？」
「オーサカ？」
「……関西。日本の」
「すまん、聞き覚えがないな。国名で頼む」
「え？だから、日本！ユーラシア大陸！東アジア！」
「……何ひとつ知らんな」
「ねえ、酔ってる？」
「あんたに言われたくないわ」
何言ってんのこいつ。ガッツリ関西弁口にしといて大阪は疎か日本すら聞いたことないって？私より酔っているのでは？
しかし見たところそんな様子ではないし、険しい表情で何かを考え込む彼が冗談を言っているようにも見えなかった。
「……ちょっとこの話置いとこか。次、あんたは俺のこと知っとるみたいやけど、俺はあんたのこと知らんねん。ほんまにストーカーちゃうの？それか誘拐犯やと思っとるんやけど」
「ゆ、誘拐？」
「いつの間にか眠っとって、そんで目が覚めたらここにおった。とりあえず外に出ようとしたとこであんたが来たから敵やと思ったんやけど……」
「見た通り、私はついさっきまで呑みにいってて、それで帰ってきたところ。こんな状態じゃそんなでかい図体の男を誘拐なんて到底無理でしょ」
「せやんな。あんたが俺をここまで連れてきたっちゅうのはないと思う。こんな酔っぱらいに見張り頼むような阿呆が誘拐するとも思えへんし、この家にあんた以外がおるような気配もない……なんで俺、ここにおるんや？」
「私が聞きたいよ。というか、さっきまで一緒に呑んでたよね？記憶ないの？」
「酒なんて一月は呑んでへんけど」
「……いや先週も行ったよね？」
「あんた、俺のこと誰かと勘違いしてへん？」
「トントンなんでしょ？」
「……そぉやけど」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 659人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽっぷこーん(プロフ) - CSSのON/OFF出来るようにしてくれると嬉しいです。デフォに慣れてるとあまり落ち着かなくて……無理でしたらすみませんが、ご検討よろしくお願いします。めちゃくちゃ面白くて好きです。見てる途中です (2021年11月4日 17時) (
レス) id: 23b3a74ded (このIDを非表示/違反報告)
都 はなれ(プロフ) - はじめまして、ひぷさんの他作品から来たものです。CSSが切れないので設定の方変えていただくことは可能ですか？都合のお願いで申し訳ありませんがよろしくお願いします。 (2021年2月6日 22時) (レス) id: 70f991d98e (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 倉の中の石さん» 倉の中の石さん、初めまして！そう言っていただけるととっても励みになります。ゆっくり更新になってしまいますが、是非この先も楽しんでいただけたら幸いです。 (2019年11月21日 18時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石(プロフ) - めっさ面白いです！夢主ちゃんがヒロインヒロインしてなくて非常に好感が持てますね！更新頑張って下さい。応援してます！ (2019年11月20日 2時) (レス) id: b9ac23ea5c (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 零さん» 零さん、初めまして！お目通しいただきありがとうございます。上手く違いを出せているのかとても心配だったのでドキドキしていただけてとっても嬉しいです！これからもどうぞ、当作品を宜しくお願いいたします。 (2019年11月10日 23時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
