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彼女との再会は良くない偶然だった。
「今日はもうしめちゃいましょうか」
洗い物をする梓さんの元へさきほど帰った客の食器類をまとめて持っていくとそう切り出された。
「ですね。お客さんも来なそうですし」
「じゃあ安室さん、テーブル拭き終わったら外の看板しまってもらってもいいですか?」
「わかりました」
水や食器の音を背にテーブルを拭きながら先日の出会いを思い出す。
まさか安室透として接客をしている相手に降谷と呼ばれるとは思わなかった。
死角から突然ぶっ刺されたような感覚。止まりかけた思考をすぐにフル回転させ彼女が誰なのか、観察して導き出した。
それと同時にこの場で降谷零だと悟られてはいけないと思った。
しかし安室透を突き通したところで彼女を誤魔化せたかはわからない。疑いを持った彼女が周囲の人間に降谷零の名前を聞き回る可能性もある。
仕事上一般人に簡単に身分がバレるなんてことはないとわかっていても彼女が何か行動を起こした結果最悪組織に正体がバレるなんてことはあってはならない。
だから仕掛けた。
彼女が疑うように。彼女だけにわかるように。
俺が降谷零だという可能性を散りばめて彼女が再びポアロに訪れるように。
わざと自らヒントを与えて不信感を煽った方が直接俺の元に聞きに来る可能性が高いと思った。
テーブルを拭き終わり扉の方に向かう。
あれからまだ彼女には会っていない。
彼女が人違いだと納得してしまうような鈍感な人間だったならそれでいい。
もし安室透としてここで働いていないときに来ていたら確かめる術はない。
「……はあ」
なぜ今になって昔の知り合いに再会するんだ。
重いため息を吐いて看板に手をかけたときあいつの顔が脳裏にチラついた。
Aという名前。名字は聞いたことがあるはずだが思い出せない。苦い物が苦手。甘い物が好き。
全部あいつが言っていたこと。
「あの…」
看板を持って店内に戻りかけていた背後で控えめな声に呼び止められた。
良くない偶然から数日。
「ああ、こんばんは」
「…こんばんは」
ようやく彼女が目の前に現れた。
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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時