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liqueur:23 *end* ページ47

やけにその言葉が響いた。


胸の少し上の辺りにあった痞がなくなるような。

そこにあった大きな塊がどんどん溶かされていくような。


駄目なんだ、このままじゃ。

漠然とそう思えた。


「Aさん」


一瞬だけ止まった涙は無意識に再びぽろぽろと落ちてきた。

悲しいんじゃない。

ただ大きな塊が溶けだして、それが涙になって流れ出てくるような。そんなイメージ。


「萩原が亡くなったあの日から、今日まで…一度でも泣きましたか?」


定かではない。けど、たぶん。


「研二が…亡くなってから…こんなにちゃんと泣いたのは、今日が初めてかもしれません」


悲しみをひどく通り越した衝撃と喪失感の方が大きかった気がする。

研二とは二度と会えないという現実は時間が経つにつれてなんとなく受け入れるようになった。


「萩原のことを、今度は、ちゃんと受け入れて、あなたはあなたの時間を歩むべきだと思います」


ゆっくり、ゆっくり。

私の中で何かがなくなっていく。


「降谷、くん」


家族にも友人にも誰にも見せなかった、言わなかった、私の本音。


降谷くんに初めて零して、諭された。


涙を流してしまったら駄目だと思った。

心配をかけないように大丈夫だよとできるだけ笑顔を見せた。


その実本音はいつまでも研二に、研二との思い出に縋って、閉じ込めて、必死にあいた穴を埋めようとしていた。


駄目なんだ、このままじゃ。

前に進めたと思い込んでいただけなんだ。


「降谷くんと…研二の、話をすることで…私は前に進めるんでしょうか…?」


彼の表情を見て、そんなこと彼にだってわからないのに困らせてしまったなと思った。


「それは、わかりません。でもたくさん泣くとすっきりするかもしれませんよ」


にこりと笑った降谷くんにつられて少しだけ口の端を上げられた。


「じゃあ…今まで泣かなかった分、降谷くんの前でたくさん泣こうと思います」

「いいですよ」

「研二のことも、みんなのことも、いっぱい話して、聞かせてください」

「じゃあ手始めにAさんと付き合う前の萩原の小話でもどうですか?」

「小話……ふふ、聞きたいような聞きたくないような話ですね」



凝り固まっていた何かがじわりじわりと降谷くんの言葉で解れていくような感じ。

忘れたくなくて、忘れないようにしていた思い出を、思い出にするために。



手元のグラスの氷はすっかり溶けてしまっていた。

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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時

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