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「しん……いちろ…?」





目の前の光景に固まった。


どうしたの、とか、なんで、とか。


声が一瞬出なくなった。


頭から血を流して倒れている真一郎。


駆け寄った真一郎はピクリとも動かなくて。





「Aちゃんっ……」


「…………圭介…?」


「オ、オレ……ッ!!し、真一郎くんが!」





どうしてここに圭介が、とか。


その格好は、とか。


何があったのと聞くと、あたしは携帯を開いて救急に電話していた。





「救急です。頭から血を流して倒れてて、それで……」





隣にいる圭介の背中をさすりながら、聞かれた事を電話で答える。


電話している最中、あたしは不思議と冷静だった。





「オレ、オレッ……」





咽び泣く圭介。


その後ろでブツブツと何か呟いているのは誰だろう。


知らない顔だ。


けどそんな事を考えてる余裕はなくて、あたしは真一郎の手を握って声をかけ続ける事しか出来なかった。


早く救急車に来てくれと願いながら。





「しっかりしてよ……しんいちろ…」





その後の事はあまり覚えてない。


救急車が来て、真一郎と一緒に病院に行って。


病院で万次郎と会って。


エマと会って。


医者に命は助かったけど、目を覚ますかどうかは分からないって言われて。





「目ぇ覚ませよバカ野郎。可愛い妹、泣かせんな……」





今日はもう遅いからと万次郎とエマを家まで送り、一人になって、あたしは初めて泣いた。


どうしよう、このままずっと目を覚さなかったら。


死んじゃったら。


そう思うと怖くて、夜は眠れなかった。





「A」


「万次郎」


「………」


「病院、行く?」


「うん」





朝、あたしの家を訪ねて来た万次郎。


眠れなかったのか、万次郎の目の下には隈があって。


あたしもだけど。


あたしが運転する車で病院に行って、真一郎の病室に入って、眠る真一郎を見た。


頭には包帯が巻かれてて、真一郎って呼んだら、おー悪い悪いって起き上がって声をかけてくれそうな。


するとぽつりと万次郎が口を開き、昨日何があったのかを語り始めた。





「オレのせいだ」


「……万次郎のせいじゃない」


「でも」


「あのバイクね、元々あんたの誕生日が来たらあげるつもりだったの」


「え?」


「真一郎、言ってた。族の総長が原付なんてカッコつかないだろって。だからコツコツ整備して、あいつの誕生日に渡してやるんだって。そう言ってた」

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ピアノ - 完結おめでとうございます!もう、真兄推しの私にとったら泣けて最高のお話でした!これからも頑張ってください! (2021年10月10日 10時) (レス) @page49 id: 68f7274f2c (このIDを非表示/違反報告)
ルイにゃ - 完結おめでとうございます とても泣ける話でした (2021年9月29日 18時) (レス) @page49 id: c326ad8a0b (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - 完結おめでとうございます!これまでに無いハッピーエンドです....真一郎くんが起きた時はもう...全私が喜びましたwこの作品に出会えて良かったです^^* (2021年9月29日 3時) (レス) @page49 id: 849fa7e773 (このIDを非表示/違反報告)
ワカメと昆布って似てね? - 完結、おめでとうございます!原作が辛くて辛くて仕方なかったけど、この作品に出会えて本当よかったです!2人の結婚式とか結婚式のスピーチのお話が見たいです!できればでよろしいので書いてもらえたら嬉しいです! (2021年9月28日 22時) (レス) @page49 id: 293adefca4 (このIDを非表示/違反報告)
43(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白くて、一気に見ちゃいました!幸せそうな夢主ちゃんを見れてよかったです!! (2021年9月28日 16時) (レス) @page49 id: abf6fd2177 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴんぞろ | 作成日時:2021年9月15日 0時

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