モトカノ依存症【吉沢亮】 (ページ9)

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episode9 ページ9

高校三年生
多分、なんだかんだ人生で一番濃い一年だったと思う

彼女とは未だにダラダラとLINEを続けている
形の上では「友達」なんだろうけど二人で話すことは殆ど無い
廊下ですれ違っても会釈も何も交わさない

片思いしてる奴とされてる奴。
傍から見てもそう

神木:え、まだ付き合わないの？

『何で付き合わなきゃいけないんだよ』

神木:だってそうでしょ。なんやかんや3ヶ月間何もないままだよ？中学の頃の亮だったら既に別れてるよ

よくもまあそんなに覚えてるわ…
中学の時の彼女の名前なんてもういちいち記憶に無い

それぐらいテキトーな恋愛してきたという証拠だ

『…あ。いる』
神木:え？どこ？

遠くにいても彼女のことを見つけられるようになっていた
移動教室とかで廊下で見かけることが増えたからだと思う

前から歩いてくる彼女は友達と笑みを浮かべて何やら盛り上がっている
だけど前から歩いてくる俺に気付いた瞬間、表情が固まって俯く

それがいつもの彼女のパターンだ

すれ違う時も何も会話は交わさない

…女子ってあんなに髪伸びるもんなんだ
彼女とすれ違う時にそういうことを思うようになった

あとやっぱり背の高い友達と話す時に彼女は若干上目遣いになっている

神木:亮、見過ぎ
『…え？俺？』
神木:自覚症状無し？

苦手だとか嫌いだとか言ってたのに
知らぬ間に目で追うようになっていた

・

制服には半袖が無かった
夏になると薄手のシャツ一枚

当時はまだ教室にエアコンが完備されていなかった
だから髪の長い女子は髪を束ねている子が多い

だけど彼女は夏でも髪を下ろしていた

『…』

何で下ろしてるんだろう
長いし絶対暑いと思うのに

いつも一緒にいるその子は髪を束ねている

神木:Aさん可愛くなったと思わない？
『…』

特に意識していたわけではない
隆がいつも彼女のことを口にするたびにまるで見透かされたように思う

だけど付き合うことがどれだけ面倒臭いことなのかは知っている
きっと彼女も一緒だと思う
付き合ったら皆口を合わせて言うことは一緒

そう思うと今の関係で十分だ

…そう思っていたのに。

『…』
「…これ。」

夏休み間近の時に呼び出された時。

彼女から手紙を渡された