モトカノ依存症【吉沢亮】 (ページ7)

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episode7 ページ7

初めてのキスは中学の時だった

当時付き合っていた名前も思い出せない子
その子は初めてではなく慣れた様子で笑みを浮かべていた
付き合うということはそういうこと
手を繋いで、キスをして、身体を重ねて、言葉で確かめ合って
そういうことでしか相手に同じ気持ちであることを証明できない
どれだけ言葉だけで繕っても終わる時は一瞬

ピロン♪

友達でもない、彼女でもない
俺のことを好きなその子とはLINE上でのやりとりしかなかった

一日１つか２つのメッセージを送ってその繰り返し
映画や音楽の話、共通の教師の話
そんな話をするだけ
頻繁に返すことはなかった

変に期待されたりすることはできるだけ避けた

神木:どれにするの？
『…これ本当に返すの？』
神木:貰ったんだからお返しするのが普通だろー？

男二人でデパートの特設コーナーに入って早10分。
バレンタインのお返しなんて初めてだ
というより、今日の今日まで忘れていたのに隆はしっかりと覚えていた

『今まで何も言ったことなかっただろ』
神木:ていうかバレンタインの時期に彼女いたことないだけじゃん
『…お前もしかして応援してんの？』

ばれた？と言わんばかりの笑顔を浮かべてクッキー缶やらキャンディを見ている

神木:あの子、不器用なりに亮に好かれようと頑張ってるじゃん。健気～～

『…迷惑とか思ってないのか』
神木:迷惑だと思うならさっさと言えばいいじゃん。
ごめん、友達にも彼氏にもなれないって。

…

神木:？亮？
『…逆恨みして刺されたりしない？』
神木:まあ～絶対とは言えないよね

そうやって、ごまかしていたと思う
小さなことも大事な時も

隆に言われた時に思い浮かんだ

彼女にそういう風に言えばどうなるんだろう
傷ついた顔をする彼女を想像すると

まるで自分が悪者になった気分になった

『…これでいいか』

罪悪感があった。
彼女が傷つかないように、彼女から離れたかった

もっといる
俺なんかよりずっと真っ直ぐに向き合ってくれる人なんて

それでもはっきり言えないのは
やっぱり傷つく彼女を見て悪者になる自分を見たくはなかったからだった