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デカ荷物は小さな声でポツポツと話し始める。
『今日、アメリカから引っ越してきて、それで、入居予定だった家に行ったら、昨日火事があったみたいで』
「大変ですね…」
『両親もアメリカに居て、おじいちゃんおばあちゃんは大学からかなり遠いし、僕、家、無いんです…』
「ホテルとか…」
『この辺探したんですけど空いてなくて』
少し、いやかなり絶望的な状況なデカ荷物に少し同情してしまう。
「いや、あるじゃん、家」
『えぇ!?』
「Aの家が、あるじゃん」
ソンチャンの突拍子のない発言に、「はい!?」と今年1番の大きな声で驚いてしまうと、デカ荷物はそのでかい体をびくりと揺らした。
「いやいや、何言ってんの」
「いいじゃん、A、前家少し広いって言ってたじゃん」
「それはそう、だけど」
デカ荷物は目に少しかかった前髪の中からキラキラと希望の光を見つけたように私を見つめた。
そんな子犬みたいに見つめられても…
「今この場で身の潔白と契約書書いてもらえばいいじゃんㅋㅋ」
「いやまって、」
『僕、イ チャニョンって言います。10月からブリズ大学の国際学科に入学予定です。怪しいものでは決してなくて、刃物も何も持ってません。あの、押印するので、契約書をください、助けてくださいㅠㅠ』
「お?国際学科ってAの後輩になるじゃんㅋㅋㅋ」
完全に他人事になっているソンチャンは、カフェのチラシの裏面に簡易的な契約書を書き始め、デカ荷物改めチャニョンはそれに押印していた。
え、嘘でしょ?突然こんなことになる?
『ありがとうございます、Aヌナ。僕の命の恩人ですㅠㅠ』
チャニョンはキラキラした目で私に抱きつき、ソンチャンはそれを笑いながら動画に収めていた。
こうして、チャニョンと私の少し不思議な同居生活が始まった。
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作者名:天然水 | 作成日時:2024年2月18日 23時