私があなたの彼女です [赤緑]

退院といいやつ ページ15

「退院おめでとうございます！」



そこからまた1週間ほどが経ち
しげはようやく退院できることになった



「そかーしげおらんくなるのかぁー」

「お？寂しいんや照史？お？」


「その顔やめぇ笑」

「ほれ近う寄れ近う寄れ笑」



「もぉー帰れ帰れ！さっさと退院せぇ！
ほんまうざったいガキンチョやで、
Aちゃんも大変やなぁ？笑」


しげと照史くんはすっかり仲良くなって
今も照史くんにガンガン絡みに行くしげ




「まぁまぁまぁすぐ検診来たるから！

それまではハンカチぐっしょぐしょにして
しげちゃんのこと待っとき？」


「鬱陶しいわぁ来んな来んな！笑」



病院の出入り口付近だというのに
2人でキャッキャしているから

患者さんもみんな見ていて
照史くんは何と看護師さんに注意された



「お前のせいやからなしげ！
せいぜい元気に過ごすんやぞ！」

「心配せんでも死ぬほど元気や！」



先生達に手を振って私達は病院を後にした






バスでは窓際に座り
ずっと窓の外の景色を眺めていたしげ



その表情はどこか楽しそうで

でも同時にどこか憂いを含んでいた



ずっとそわそわしているのは
バスの中でも降りた時も変わらない



「ここが俺の地元か…」



バス停で立ち止まり
しみじみと辺りを見渡すしげ



「どう？懐かしい？」




「んー懐かしい気もするけど…

やっぱ何も思い出されへんわ笑」




そう言われてやっと

なぜしげがどこか物寂しそうなのか、
なぜしげの性格が少し変わったのかに気づいた




やっぱり、しげも思い出したいんだ。


過去の自分について何も思い出せないことに
どこか負い目を感じているんだ。



性格が変わったんじゃない

その証拠に、照史くんとふざけている時のしげは
記憶をなくす前のしげと変わらなかった




しげはただ

周りの、自分のことを知っているけど
自分にとっては初対面の人達を


誰1人悲しませないように、傷つけないように

ずっと気を遣ってるだけ。



記憶をなくしても


しげは変わらず嘘がつけなくて

"いいやつ"なんだな、って。




なんで私、こんなに簡単なことに気づかなかったんだろ。




「しげ…大毅くん、さ」

「ん？」




「…ゆっくりでいいからね。思い出すの」



ゆっくりと景色から私に目を移すしげ




「焦らなくていい。一生思い出せなくてもいい。

私は、ずっと大毅くんの味方だから」




「…おぉ」


むず痒そうに目を逸らすしげ
噛みしめるように何度も頷いてから



「さんきゅ、Aちゃん」


照れ臭そうに微笑んだ

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