カフェホリック男子 [桃]

ぶさいく顔と悩み事 ページ42

制服とはいえ
いつも通りカウンターの内側に入って

小瀧望とは自然とカウンターを挟んで向かい合わせになる



「はい、これ」

「よっしゃあ、いつものや」


夏用にアイスにしたカフェラテを
いただきまーす、と呑気に吸い上げる小瀧望



「アァー！やっぱ落ち着くわ！
カフェモカも美味かったけどこれはホームやな」


グラスを指差して
お前もやるなぁ、なんて1人で渋い顔をしている



とりあえず飲み物を先に出してみたはいいけどさ。

こっちはどうしたら…



「何やその顔」

「ん！？」


「ぶっさいくやぞ」

「ごめんなさいねあんたみたいに
自慢出来るほどの顔面じゃなくて」


「違う。悩み顔がぶす言うてんねん、
お前がぶすかどうかなんて一言も言うてへん」

「あぁ、そう」



「…聞いてやらんでもないで、悩み」


「え？」



「ほら、言うてみ。
常連がたまたまバイトの愚痴聞いたことにしたるわ」


また俯いてストローを咥える小瀧望



私、今そんなに悩み抱えてそうな顔してんの？

小瀧望に心配されるほど？


ってか何でこんなに悩んでるんだ？




どっちにしろ、下を向いている今がチャンスだ。



白いお皿の上に乗せた渾身の1切れ

1つだけ添えたイチゴと、
少量の甘さ控えめのホイップクリーム



私はカウンターの上、小瀧望の手元に
そっとガトーショコラのお皿を置いた




「わ、何…へ？なーんや、余っとったなら先言うてや笑」



予想通りの返事
そりゃあ思うよね、『本日のケーキ』だって。



「余ってないよ」

「ん？」


「ガトーショコラ。もう売り切れた。
…って言うのも嘘になるけど」

「え、何？どーゆーこと？」



どんどん気恥ずかしくなって来て

冷蔵庫から、同じお皿に乗って
同じホイップクリームとイチゴが乗った
ガトーショコラを取り出す



「これ、中間さんの本日のケーキ。これ、私が作ったケーキ」

「え、お前が？何で？」



「あんたが誕生日って聞いたから。
あんたが散々お姉ちゃんのガトーショコラが好きだけど
1人暮らし始めたから今年食べられないって言うから。

でも一緒でしょ？ほら」



私は恥ずかしさを紛らわすために
2つのお皿をシャッフルした

もちろん作った私はどっちが自分のケーキか分かるけど
ぱっと見は全然分からない



「どうせそんな違わないし
味も絶対中間さんの方がいいからさ？

そっち食べて、今新しいの持って来るから」




「嫌や」



「何が？」





「お前が作った方、食べたい」



小瀧望は一切迷わず
私が作った方のお皿を引き寄せた




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