カフェホリック男子 [桃]

濃いめのカフェモカと将来の夢 ページ11

「Aちゃん、いつまでお客様待たせるん」


中間さんの声でようやく我に返った



「…何名、ですか」

「声小さい。あと笑顔」



「何名で！ございますか！？」


中間さんの言っていることはごもっともだけど
今はそれどころじゃないって！




すると小瀧望も絶妙な笑顔を作り


「1名でお願いしまぁーす」

「こちらへどうぞー！」


「あっカウンター席がええんやけどいいですかー？」

「は！？」



耳を疑うけど小瀧望は微笑んだまま

何だこいつ…何がしたいんだ…？



「じゃあ、どうぞー…」


店員の義務として昨日と同じカウンター席へ連れてくと



「カフェラテと本日のケーキで」

「え？あ、はい」



「あとおねーさんの休憩時間」


「…はい？」



「お時間頂きたいんやけど…あかん？」



完全に私を馬鹿にしたトーンとおすまし顔で言ってのける

何のために…



「…さっきの話するために決まっとるやろ」


「え！？」



「心の声ダダ漏れやわ。
あれ、もしかしてナンパかもって自惚れとった？」

「自惚れる要素どこにあったんですか？」



「んあぁもう！とにかく時間作れ…ちゃうわ
お願いしてもええかな、おねーさんっ？」



こいつってやつは…！



「喜んで。ご注文の物はすぐにお持ちしますねー？」

「どうもー！」


作り笑顔を見せびらかしあって離れた






結局時間が取れたのはそこから1時間後


今日はカフェインと糖分が必要そうだ、と
カフェモカを濃いめに作り

小瀧望のカウンターを挟んで向かい側に座ると
顔を上げ勉強道具を脇にやる



お互い一言も発することなく飲み物に口をつけていると



「…金か」

「はい？」


「お前が学校に内緒でバイトやっとる理由」

「…半分正解、って感じですね」


「家庭環境悪いって話聞いたことないけど」

「まあ、普通」


「じゃあ何でなん」

「…一言で言ったらお金だけど」


「だけど？」

「将来のためっていうか…夢？」



ハテナばかり浮かぶ小瀧望に勢いで打ち明けた



「私、将来パティシエになりたいんです」


「…ほぉ」



「そのために東京都内の方に出て
お菓子の専門学校に行くのが夢なんだけど

奨学金とかもらえるような成績でもないし
兄弟も多くて到底費用全額払ってもらうなんて無理。


そんな時私のお父さんがここの常連客って聞いて
私がここに出向いて無理を言って

お金を稼ぎつつ技術を学ぶために働かせてもらってるんです」




一気に話してから喋りすぎたかな、と顔を上げると

口をポカンと開いた小瀧望と目が合う

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