37【お兄ちゃん】 ページ45
_久しぶりにお兄ちゃんに会いに行こう。
そう思ったのは工藤邸で秀一くんに彼は元気かと聞かれたことがきっかけだった。
自分の兄の名前が書いてある病室の前でピタリと足を止める。
ガラリと扉を開けて一歩部屋の中へ入ると、見えるのはたくさんの管に繋がれた兄の姿。
その姿を見るのは、もう何度目かわからない。
『お兄ちゃん、久しぶりだね』
自分の声だけが部屋に響いて、消えていく。
お兄ちゃんの心臓は、いつもと変わらず今日も元気に動いているのに、意識は戻らないまま。
あの時の怪我も治っているし、医者は身体に異常は見られないと言っているのに、意識だけが戻らない。
その状況が続いたため、もしかしたら、もうこのまま目を覚まさないかもしれないと医者に言われた。
お父さんもお母さんも私が幼い頃に交通事故で亡くなってしまって、生きている家族はお兄ちゃんだけなのに。
もし、このままずっと目を覚まさなくて、お兄ちゃんさえも手の届かない存在になってしまったら、私はどうしたらいいのだろう。
彼らに追われ続けて、命を狙われ続けて生きていく自信なんてない。
『って、なに考えてるのよ私。お兄ちゃんは絶対目を覚ましてくるに決まってる。絶対そうに決まってるでしょ』
いつもと同じように、ベッドの近くの椅子に腰掛けて、兄の顔を見る。
…こんな時に言うのも場違いなんだけど、実はお兄ちゃんってめちゃくちゃイケメンなのよね。
これは本当よ本当。
私はすごく可愛い!とか、めっちゃ綺麗!ってわけじゃないけど、兄はめちゃくちゃイケメン。
なんでこんなに兄弟で容姿が違うんだって、顔を見るたびにいつも思うのよ。
ほんと、神様って不公平よね。
しかも、スポーツ万能、頭脳明晰、優しくて紳士的。
どこかの金髪イケメン店員と似てると思った?
私も表の顔は似てると思うわよ。表の顔は。
お兄ちゃんの裏の顔は、超ドシスコン。
一緒にいるのが恥ずかしくなるくらい、ドシスコン。
秀一くんは昔から知ってるから慣れっこみたいだけど、お兄ちゃんと同じ職場のFBIの人たちは、兄のその性格に少しひいてたのよ。
それくらいやばい。うん、やばい。
でも今は、早くあの時みたいに構ってほしいなと思ったり。
こんなことを思う私も、もしかしたらブラコンなのかもしれない。
そんなことを考えながら、お兄ちゃんの手をぎゅっと握る。
はやく目を覚ましてと願いを込めて。
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はりねずみ。(プロフ) - 由羅さん» 神だなんてもったいないお言葉です……!ありがとうございます! (2020年3月15日 17時) (レス) id: f57cf1299c (このIDを非表示/違反報告)
由羅(プロフ) - 神、神ですね……神としかいいようがないです (2020年3月10日 14時) (レス) id: a829207c12 (このIDを非表示/違反報告)
はりねずみ。(プロフ) - 笑々さん» ありがとうございます!!笑っていただけて嬉しいです!私自身、そんな感じの会話が大好きなので、安室さんたちにもやってもらいました笑 ありがとうございます! (2019年10月10日 23時) (レス) id: 2649fb9203 (このIDを非表示/違反報告)
笑々(プロフ) - 名前を呼ばせるところで、早すぎだろなんか腹立つな は声をあげて笑いました笑 ありがとうございます笑 (2019年9月23日 10時) (レス) id: f052978bd7 (このIDを非表示/違反報告)
はりねずみ。(プロフ) - ここねさん» きゃー!ありがとうございます!!とても!すごく!本当に嬉しいです!!続編でも面白さとキュンキュンを追求してお話を進めれるように頑張りますね!これからもよろしくお願いします! (2019年5月12日 17時) (レス) id: 2649fb9203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はりねずみ。 | 作成日時:2018年12月12日 7時