安室透の前で盛大にこけるところから始まる話

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「……すみません。忘れてください」
『えっ、どうしてですか。私、ニコニコして敬語で話す安室さんよりも、そっちの方が好きですよ。カッコいい。ベビーフェイスなのにその話し方、ギャップがあって好き』
「………」

安室さんは眉間にしわを寄せた。
あら？どうしてそんなに顔をしかめてるのかしら。
珍しく褒めてるのに。

『俺って言ってた安室さんの方が自然体って感じで、本物の安室さんと話してるみたいで好きです』
「………」
『なんとなく敬語の安室さんって、気を張ってる気がするんですよね。特に凄いこともできない平凡な私の前でくらい、ありのままの安室さんでリラックスしていいですよ？私的にもその方が嬉しいし…。だからつまり、敬語を外した方が好きです。そっちで話してほしいです』
「っ……」

一人でマシンガントークをしていると、安室さんが自分の手で顔を隠した。
えっ何。私何かした？何もしてないよね？
ただただ安室さんに敬語外してほしいって訴えかけてただけだよね？あれ？違う？

「……男に、簡単に好きだなんて言わない方がいいですよ」
『どうしてですか？恋愛的な意味じゃないからいいじゃないですか。素直になっただけですよ』
「……どうしてそういうところだけ素直なんだ…。ほんとタチが悪いな…」
『え。どうして貶されてるの。私、あなたのことを褒めましたよね？』

せっかく私は好きですよって褒めてあげたのに。
いきなり貶すなんてどういうことよ。
それに、微妙に敬語取れてないし。
もしかしてそれを頼むのがダメだった？
だから貶してきたのかしら。
とても深刻な理由があって、どうしても敬語は外せないとか？
彼女さん以外の女には敬語で話すと決めてるとか？
そういえば、安室さんって彼女いるの？
………どうしよう。凄く気になってきた。

「彼女はいませんよ」
『…よく聞きたいことがわかりましたね』
「全部声に出てました」
『嘘でしょ』
「本当です」
『嘘って言ってください』
「嘘です」
『……やっぱり本当のこと言ってください』
「嘘と言えと言ったり本当のことを言えと言ったり、一体どっちなんだ。めんどくさいな」
『いきなりどストレートに心の声を言うのやめてください。グサってきましたグサって』

どうしてこの人はいきなり貶してくるのかしら。
やめてほしいわね。結構心に刺さるのよそれ。

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