ちぃちゃんの入院生活 (ページ1)

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知念が入院してから、1ヶ月が経った。

医師として接する俺らにも、病院での生活にも慣れてきたように思う。

良いことだが、それ故に小さな問題も起きている。

それは、治療を嫌がるようになったこと。

それ自体は珍しいことではない。
むしろ、入院している患者さんにはよくあることだ。

最初は俺らに弱い部分も見せてくれたことが嬉しくもあり、ホッとした。

実際、治療目的ではなく病室に行くとよく笑顔を見せてくれるようにもなった。

しかし、知念の気持ちも緩んだおかげで次第に感情が表に出っぱなしになっていて…

嬉しいものは素直に喜ぶ。
だけど嫌なものは嫌だ言い、さらには泣いてしまう。

昨日だって治療が嫌だと大泣きし、仕方なく引き上げた。

ダメだと分かっていても知念には甘くなってしまう。

・

静かなナースステーションでカタカタとパソコンを打ちながらぽつりと呟いた。

「今日は頑張れるかなー」

さすがに今日も処置しないのは体に毒だ。
何が何でも頑張らせなくてはいけない。

でも、俺は知念の嫌がる姿を見るのが苦手…
自信のなさから出た言葉だった。

「ヤマ次第じゃない？知念の涙には弱いもんね？」

薬棚の前で準備していた裕翔が、その心中を知ってかいたずらっぽく笑う。

「わかってますぅー」

「ははっ、ウソウソ。俺だってヤマと同じだもん。だからさ、応援呼んどいたよ」
　

応援？…と言いかけたその時、眠そうにあくびを噛み殺して歩く圭人が通りかかった。

「けいとー、こっちこっち！」

裕翔が呼ぶと、あっという顔をしてこちらに向かってくる。

「もう病室行ってるのかと思ってたよ。今から？」

「うん。ごめんね、夜勤明けのとこ。知念宥めてくれるだけでいいから」

それを聞いた圭人は、苦笑いして一言。

「頑張るね…」

自信なさげに言った。

「行くよー」

先に薬を入れたトレーを持って、病室に向かう。

その後を裕翔らが追った。

心の中では、それぞれが気合を入れ直していたのだった。