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「昨日は大丈夫でしたか」
そう尋ねる。
「はい。おかげさまで」
そう言って私もベンチに座るよう促してくれた。
ありがたく座らせてもらう。
腰を下ろすと、その人はおもむろに私が昨日貸した傘を差し出した。
「これ、ありがとうございました。本当に助かりました」
私はそれを受け取った。
「いえ、役に立てたのならよかったです」
するとその人はしばらく間をあけ、口を開いた。
「あの、名前を...教えていただけますか」
少し驚いたが、教えない理由もないので自己紹介をする。
「森山Aです。そんなにかしこまらなくてもいいですよ」
「あ...す、すみません」
なぜそこで謝る。
不思議な人だな。
見た感じ同じ高校生みたいだし。
一応確認を取る。
「高校生...ですか」
「え、あ、えっと...はい。に、二年です」
なにをそんなにオロオロしているのか。
「なんだ、同い年か。じゃあ敬語なしね」
「はい...じゃなくて、うん」
「ねぇ、名前は?」
「え、」
間抜けそうな顔をこちらに向ける。
「だから名前。教えて」
「...森山さんの好きに呼んでいいよ」
なんだそれ。
なにか名前を教えたくない理由でもあるのか。
それならそれで深追いはしない。
「んーとね、じゃあ三毛猫撫でてるから“ミケ”で」
「安直だね。わかった。じゃあそれで」
「あと、森山さんとか堅苦しいからAでいいよ」
「わかった。Aね」
ミケは嬉しそう笑った。
「A。そろそろ日も暮れそうだし、帰ったほうがいいよ」
オカンかよ。
と、心のなかでツッコんでみるもののミケに伝わるはずもなく。
「えー。もうちょっとミケと話したい」
私の口から出てきたのは、単なるわがまま。
「だめだよ。女の子でしょ。おれ明日もここ居るから」
その言葉に私の胸は大きく弾んだ。
「約束だよ。私も明日来るからね」
「うん、約束。また明日」
私は明日になるのを楽しみにしながら公園をあとにした。
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雪 - おーーなんかすごいです (2016年8月25日 17時) (レス) id: d885b7a670 (このIDを非表示/違反報告)
天宮叶(プロフ) - 読んでいくうちにとても引き込まれましました。全体的に透明感があって思わずうるっとしてしまいました。 (2016年2月27日 16時) (レス) id: ba642bc330 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:被苦人 | 作成日時:2015年7月20日 19時