. ページ13
.
駐車場に停めてあったヌナの車に飛び込み、ヌナが運転席へ座る。僕を助手席に乗せ、シートベルトをつけると、ヌナは満足そうに笑ってから車を出した。
着いた先は南山だった。
昼過ぎとは言えど、11月の冷たい風の吹く南山には、人影は少なかった。
『ディノ、いこう』
そう言ってヌナはまた僕の手を引く。
坂を道を登りながら、荒い息を繰り返す。
ヌナは、何かを話すことも、こちらを振り返ることもなかったけど、繋いだ手は強く握ったまま、離そうとはしなかった。
『ついた…！』
山の上に着く頃には、2人とも肩で息をして、膝に手をついてしばらく動けないくらい疲れていた。
それでもなんだか心は晴れやかで、うっすらと滲んだ汗も不快に感じなかった。
『ディノや、そこ座ってて』
ヌナはそう言って近くのベンチに僕を座らせると、どこかへ行ってしまった。
高い場所から見るソウルは、ビルや家屋が所狭しと並んでいて、すごく栄えた場所なのに、どこかちっぽけに見えた。
あのビル群の中の、事務所の狭い練習室で行き詰まっていた僕はもっとちっぽけだったんだなぁ、ぼーっと遠くを眺めながら、そんなふうに思った。
『ディノ、はい』
突然ヌナが視界に現れて、その手にはおでんが2カップ。一つを僕に差し出すと、ヌナも隣に腰掛けた。
湯気がぼうぼうと立ち昇るおでんの出汁を一口飲むと、体にすっと沁みて行くようだった。
さっきまではスポーツドリンクでも飲みたい気分だったけど、いまはここのおでんが人生で一番おいしいと思えるくらいだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1343人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆいか(プロフ) - ぴょんさん» ぴょんさま、コメント下さりありがとございます！思い出した…と思いきや、でした、笑まだ記憶を戻すには少し時間がかかりそうですので、暖かく見守っていただけたら嬉しいです笑こちらこそ読んでくださってありがとうございます♡ (2022年10月7日 0時) (
レス) @page44 id: ebc0952f7b (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - えー！！記憶思い出した！？！！面白いです！！更新ありがとうございます！！ (2022年9月29日 23時) (レス) @page39 id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか(プロフ) - なのこ5546さん» なのこさま、コメントくださりありがとうございます！すごく嬉しいお言葉ばかりで…大変励みになります、ありがとうございます（ ; ; ）これからも不定期にはなりますが更新頑張りますので是非また読みにいらしてください♡ (2022年9月23日 0時) (レス) id: ebc0952f7b (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - コメント失礼します🙇♀️小説とっても面白いです！！紅一点がたくさんある中、主人公の記憶がなくなる設定はなかなか無いのでワクワクしながら読んでしまいました。更新楽しみにしておりますこれからも頑張って下さいっ！！ (2022年9月16日 12時) (レス) @page29 id: 88c8eec9ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆいか
| 作成日時：2022年8月23日 1時
