PIERROT (ページ26)

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岩本side.

あれから佐久間の不調が良くなることなんてなく。

日に日に辛そうな顔になっていく佐久間に

思わず声をかけても、

あの貼り付けた笑顔で流されてしまう。

少し潤んだその瞳からは、

拒絶の意が滲み出ていて。

触れてほしくない事は誰にでもある。

自分で心の扉を閉じて、

自分を守っているところに、

何も知らない部外者が

土足でずかずかと入る訳にもいかない。

本当に限界になれば、

きっと俺らを頼ってくれるはず。

子供じゃないんだから。

ここまでずっとそうやって、

俺らはやってきたんだから。

あまり口を挟まないように気をつけていても、

佐久間はどんどんおかしくなって。

薄い胸に、細い手足に、

あぁきっとこのシャツの中には

俺が好きだった腸腰筋も

もう見えないんだろうなって。

時々、我慢出来ずに

ぶっきらぼうな心配を

佐久間に対してぶつけていると

いつからか、その瞳の奥に、

怯えが揺れるようになった。

それでも俺は、

何がお前をそうさせているのか

何がお前を狂わせているのか

封じ込めて、鍵をかけて、

ひとりぼっちで戦っているものを知りたくて。

リーダーとして、

メンバーとして、

同じ仲間として、

力に頼りになりたかったんだけど。

それでも中々その鍵を

開けてくれることは無かった。

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