第55話 もう一回言って ページ5
．
「嬉しい。ありがとう」
豪炎寺くんのやわらかくて穏やかな声。心臓がきゅーっとした。
改めて言われると、うん、すごく照れる。こういうの。
へへへって笑って恥ずかしさを誤魔化した。
やっと腕を解いた豪炎寺くん。
心なしか、いつもより表情がふわふわしてる。
「俺も…、好きだ。Aの全部が」
私の髪をさらりと撫でて、フッと笑った。
「わっ」
「“わっ”て何だ」
「ごめ…、なんかびっくりして」
「びっくりってAも同じこと言ったのに？」
「あれはだって、聞かれてるとは思ってなかったから…」
「フッ、Aらしいな」
「そうかなぁ」
「なぁ、A」
「ん？」
「もう一回聞かせてって言ったら？」
「えっ、えぇ？？」
「ダメなのか？」
「ダメじゃないけど…。えー、待って、ちょっと待って。準備させて。心の準備」
「いるのかそれ」
「いる。いるの」
「いらないだろ。ほら、早く言ったら楽になるぞ」
「うーえぇ……ん゛ん゛っ。はい、じゃあいくよ。
ご…豪炎寺くんの全部が好っ……ん！？」
「フッ、知ってる」
「ちょっと！誰か見てたらどうするの」
「問題無いだろ。彼女なんだから」
「そ、そういう問題じゃなくって…」
甘々だ。マンゴージュースよりも、炙ったマシュマロよりもずーっと甘い。
とろっとろに溶けちゃいそう。いやむしろ、もう溶けてると思う。
めっちゃくちゃに混乱してる。
今日一日にいろいろぎゅっと詰め込みすぎじゃない？
小分けにして摂取しないと糖分過多で失神しちゃうよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：pomme | 作成日時：2021年3月22日 10時
