第62話 さりげなくない ページ12
.
「それにしてもA、ぐっすり寝てたよな。おぶっても、全然動かなかったぞ」
「ごめんごめん、重かったよね」
恐ろしく記憶が無いし、ほんっとに申し訳ない。両手を合わせて、ペコリと頭を下げた。
「まあそうだな」
「そこは『そんなことない』って言わなきゃ」
「フッ、冗談だ」
修也がわしゃわしゃって私の頭を撫でながら微笑んだ。
申し訳なさみと、ありがたさでいっぱいだ。ほんと、頭が上がらない。
話によれば、他のマネージャーの子たちが荷物を運んでくれたとかで、ああ、もう、みんな優しすぎ。なんていい子なの。
何が何でもお礼しなくちゃ。
.
時刻は午後9時を少しすぎたところ。
みんなは何してるんだろう。最後の夜だから盛り上がってんのかな。最後とはいっても、たった二泊三日なんだけど。
ベッドに寝転がってスマホを見ながら、そんなことをふと思った。
「A、もう寝るのか?」
修也が当然のように私の布団に侵入してくる。
それから、さりげなく、いやそんなことないな。かなりぎゅっと私の腰を抱き寄せて、ぴたりとくっついた。
おろしてる修也の髪が頬に当たってくすぐったい。
それもあるし、なんかいろいろ相まって、変な気分になっちゃいそうだ。
「んーまだ寝ないよ。さっきまでめちゃくちゃ寝てたし…」
86人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pomme | 作成日時:2021年3月22日 10時