検索窓
今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:27,402 hit

第3話 空っぽ ページ3

.





たくさんの荷物を持ったまま、なんとか鍵を開けた。


ただいま、と声を出してみたものの、もちろん返事はない。



目の前に広がるのはしんと静まり返った真っ暗な闇で、ふと、自分は本当に一人なんだと悟った。

途端に涙が止めどなく溢れてきて、靴を履いたまま玄関に座り込んで、泣いた。


今まで我慢して、蓄え続けてきたものが、堰を切ったように溢れだした。





ハンカチを取り出して気づく。お母さんが入学祝いにくれたやつだ。お母さんが好きだった柔軟剤の香り。

いつもは気にもとめていない些細なことが、キシキシ痛む心を刺激する。



お母さんと二人でいるときよりも、はるかに、この家は大きく感じた。

寂しいよ。私を置いていかないで。

そんな言葉が、だだっ広い玄関にぽつりとこぼれ落ちた。




玄関から這い出ても、ソファに座っても、お風呂に入っても、ベッドに寝転がっても、涙は取れなかった。







.


もうダメだと思っていても、当たり前の顔をして朝はやってきた。

そして、ちゃんとお腹が空いていた。



空っぽの胃にインスタントのポタージュスープが染み渡る。

泣きはらした目の周りは、涙が乾いてパリパリになっていた。



お母さんが残してくれたお金と、この家。そのおかげで、たぶん自分が働くようになるまでは何一つ不自由なく暮らせる。


暮らせるけど、暮らしていけるんだろうけど、一人じゃ寂しいよ。

第4話 来客→←第2話 後悔



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
48人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

pomme(プロフ) - なの。」さん» うわああ、ありがとうございます……!!作ってよかったって思えました(;_;) (2020年4月1日 23時) (レス) id: 8b0e929018 (このIDを非表示/違反報告)
なの。」(プロフ) - こんな素晴らしい作品を生み出してくれてありがとうございます.........!!尊すぎて何て言ったらいいのか分からないのですが、もう、好きです(語彙力)更新本当にお疲れさまでした!! (2020年4月1日 19時) (レス) id: f8911c1a4d (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 豪炎寺修也推しさん» いつもコメントありがとうございます!たしかに、豪炎寺さんなら対抗できそうな予感……。楽しみます!(^o^)! (2020年3月29日 21時) (レス) id: bbbf9b9cb5 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - pommeさん» 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきました!この主人公ちゃんの優しさと言ったら敵うものはありませんね!あ、豪炎寺がいたか…←お疲れ様でした、あつ森楽しんでください! (2020年3月29日 20時) (レス) id: e2e58e1092 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - イナイレ大好き人間さん» ありがとうございます!私はあつ森に時を吸われるクソ人間です(適当) (2020年3月29日 12時) (レス) id: bbbf9b9cb5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:pomme | 作成日時:2020年1月12日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。