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第21話 近くて遠い距離 ページ21







惨敗した小テストの反省をしつつ、お弁当を食べ終わった頃、突然教室の中が騒がしくなった。


キョロキョロと周りを見渡す。


「今日、何かイベントでもあるの?」


「いや、そんなはず無いけど……」



みんなの視線は中庭の方に注がれていた。

窓から身を乗り出すクラスメイトを前に、秋と二人で首を傾げた。



『何なんだろうね』と、好奇心に負けて中庭を覗いた。





「あれ、豪炎寺くん……だよね?」


みんなの視線の先には豪炎寺くんがいた。

それと、その向かいには綺麗な女の子が。



「あっ、あの子ってたしかモデルやってる子だ」


そう言って、秋がいくつか雑誌の名前を挙げた。ファッションに疎い私でも知ってるような有名な雑誌ばかりだった。


知らなかった。こんな子がいたなんて。



何してるんだろう。豪炎寺くんと……。

そんな疑問に答えるかのように、誰かが『告白だって』と大きな声で言った。




「こく……はく…」



そのとき、一瞬でざわめきがピタリと止んだ。


女の子が恥ずかしそうな素振りで、豪炎寺くんに近づく。


息を呑んでその様子を見つめた。

中庭を見下ろしているのに、まるで二人が目の前にいるような錯覚を覚えた。







「好きです。付き合ってください」


女の子はそう言った。



ぎしぎしと、胸の奥が酷く痛んだ。

微かに震える手を強く握りしめて、目を瞑った。



恐ろしいほど静かな緊張に包まれた空間。そこに放たれた、透き通るような可愛らしい声。

それを盛り立てるみんなの声援。




目の前の二人。注がれる視線と声援。









胸が締め付けらるように痛い。

それは、ときめくようなドキドキとは全く別物の、尖った痛み。





こういうことがあるだろうって、頭ではわかってたはずなのに。

でも、いざ目の前にしちゃうと、ね……。



豪炎寺くんが前に言ってた好きな人って、この子のことだったのかなぁ。

そうだとしても、そうじゃなかったとしても、お似合いのふたり。



全く手が届かない。



特別な距離感とか、優越感とか、そんな意味のないものを欲しがってた自分が、ものすごく滑稽に思えた。

第22話 貴重な練習時間→←第20話 独り占めしたい



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pomme(プロフ) - 雪華さん» 高評価ありがとうございます!ごめんなさい…そのあたり詳しくないです( ; ; ) (2021年3月18日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - 高評価しました!東方は知ってます?私は東方の霊夢・チルノ・大妖精・魔理紗は大好きです! (2021年3月18日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 星猫さん» 知ってるアニメ……?何ですかねぇ。メジャーどころはほとんど知ってるんじゃないかな〜と思います。イナイレはもちろん好きですし、あとは呪術とか金カムも好きです〜! (2021年3月9日 20時) (レス) id: 7207ce4c56 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか? (2021年3月9日 16時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:pomme | 作成日時:2020年12月31日 5時

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