触れて確かめて 【豪炎寺修也】

第19話　あの日の思い出 ページ19

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袖でもいいので。

その言葉通り、豪炎寺くんの袖を掴んで、時折鳴る雷の音にビクビクしながら歩いた。変わらず私に合わせた、ゆっくりとしたペースで。



何だろう。この感じ。

前にも味わったことがあるような。



他愛もない話をする中で、ふと頭の片隅に浮かんだ幼い日のシュウくんとの思い出。




シュウくん。

小さいころの私が初めて好きになった子。


ふふ、懐かしいなぁ。



あの日もこんなふうに雷が鳴ってた。

怖がる私の手を、『俺がついてるから大丈夫だ』ってちっちゃなシュウくんが握ってくれたっけ。




今思えば、可愛くて可愛くて仕方がないんだけど、あのときはシュウくんが本物のヒーローに見えた。

ほんとにかっこよかったなぁ。人生で初めてときめいた瞬間だもん。

元気にしてるかな、シュウくん。




小さな彼の可愛い笑顔を思い出して、頬が緩んだ。




「どうかしました？」


豪炎寺くんが訝しげな目で私を見てる。


「昔ね、シュウくんっていう友だちがいて……」


全部話終わったところで豪炎寺くんの方を見る。すると、豪炎寺くんは、なぜか耳まで真っ赤にして、片手で顔を覆って恥ずかしそうにしていた。


「あっ、ごめん。“シュウくん”って、豪炎寺くんもシュウくんだもんね。なんかごめんね。変なこと言っちゃって」


慌ててそう言ったけど、その場を包む何だか少し気まずい空気。


『俺のこともシュウくんって呼んでいいですよ』っていう、豪炎寺くんにしては珍しい冗談も、耳まで真っ赤じゃ、効力はまるで無い。



お互いに何となくギクシャクしたまま、さよならした。

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