第56話 覚えた温度 ページ7
．
「……いって…もうちょい優しく…」
「無理。耐えて」
顔とか肘とか、いろんなところにできた痛々しい擦り傷が、二人の乱闘の激しさを物語っていた。
「影山くん、大人気ないよ」
「…大人じゃねぇし」
「まぁ、たしかに。…じゃあ、アレだ。もう、子どもじゃないんだから……ってやつ。子どもじゃないんだから、暴力的解決はいただけません」
「いや、でもアイツが……」
「言い訳しないの」
シンと静まり返った部室。
消毒液が染みたのか、影山くんは『クソいてぇ』と、顔をしかめた。
一足先に日向と仁花ちゃん、それから田中先輩は帰って行った。というか、日向をなだめるために、半ば強制的に帰らざるを得なかった的な……。
「私たちも帰ろっか」
声をかけると、影山くんは上の空で生返事をした。
．
夏の夜ってこんなに湿度高かったっけ。
ペタペタする首元をタオルで拭った。
「…俺は、どうすればよかったんだ……？」
少し掠れた声が、影山くんの不安とか焦りを表しているようで、胸が痛んだ。
滅多に弱音を吐かない影山くんが、ぽつりと零した本音。
何か、力になるような、アドバイス。
……例えば、キャプテンとか菅原先輩がするような、肩の力を抜いてあげられるような。そんな何かを、伝えたくても、伝える術を私は持っていなかった。
何も言えなくて、黙ったまま俯いていると、『悪りぃ』と、影山くんが気まずそうに呟いた。
「ううん。私こそ、何も……言えなくて、ごめんね…」
胸がギュッとして、まともに顔を見られない。
続く沈黙。
黙ったまま並んで歩くのは、初めてだった。
お互いに好きだと知る前だって、こんなに静かだったことはないはず。
取り止めのない話とか、たくさんしてた。
バレーの話も、たくさん。
重なる足音を聴いて、ふと、あの日の夜を思い出した。
初めて手を繋いで、今日みたいな生ぬるい夜風を浴びながら、並んで歩いた。
そんな、ほんの少し前のできごとが、遠い昔のことのように思える。
沈黙、気まずさ。
そういうモヤっとした何かを感じているのに、影山くんの体温を知っている左手は、それを求めるように微かに疼いた。
こんな時でも、余計なことばかり考えてしまう自分が、少し嫌になった。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜！！🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (
レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます！！！黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう！もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜！ (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう！好き！コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に！愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます！ (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます！！！嬉しすぎて、もう泣いちゃう！！素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pomme | 作成日時：2022年1月20日 23時
