第89話 返事は後で ページ40
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朝だ。
何で朝が来るんだろう。
寝不足で脳みそがぎゅうぎゅうする。
顔を洗っても、眠気は体中に貼り付いたままだ。
寝られなかったのに、目の下に激しくクマができてたりはしなかった。
潔子さんたちにムダな心配かけなくて済むなと、少し安堵した。
本日の練習、朝一発目は音駒高校との対戦だ。
よりによって。
なぜ今。
そして、なぜ一発目。
そんな不平不満があるのはおそらく、私だけだから、何とも言えない。
……彼は、黒尾さんはどうなんだろう。
昨日、わけわかんなくなって、あの場から逃げた後から、彼とは会っていない。
すごく、失礼なことをしたと、十分すぎるほど、理解している。
彼の気持ちを踏みにじるような、ひどいことを。
たくさん探さなくても、彼の姿はすぐに見つかった。
昨日の夜とは違い、黒髪が重力に逆らってる。
目が合うと彼はハッとして、私の方に近づいて来た。
私から昨日の無礼を詫びる前に、『昨日はごめんな、困らせちゃって』と、眉を下げた。
この人は、どこまでも大人だ。
いつも、私の一歩先を行く。全てを見透かすような、余裕のある表情で。
「ごめんなさい、私こそ。…あの、すごく失礼なことを……」
「謝んないでよ。てかさ、返事、いつでもいいから、聞かせて…ね?」
黒尾さんはいたずらっ子のようにクスリと笑った。
そしてすぐに、元いた場所に戻るまでの一連の動作が、彼の優しさだと気がついた。
今のタイミングなら、烏野のみんなは準備中だから、私たちに注意を向けることは無い…的な。
はぁ、何なんですか、あなたは。
胸がぎゅうっとする。
ねぇ、私が諦めたら、丸くおさまるかなぁ。
彼も君も傷つかずに済むような、そんな風になるんじゃないの。
そんなことを考えてる足元に、トンッと軽くボールが触れた。
拾い上げて、持ち主を探す。
「悪りぃ、投げてくれ」
何度も聞いたはずの、さっぱりとした声が懐かしい。
『うん』と返事をして、それを投げた。
君のいるところ目がけて、ボールは放物線を描く。
ジャストフィット。
ポスンと軽い音を立てながら、その手の中に収まった。
『ありがとう』と言う君と視線を交わす。
心拍数がどんどん上昇してくのがわかる。何かもう、恥ずかしいくらいに。
「いいえ」
返事をするだけで、無意識に口角が上がった。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時